青年部夏の学習交流会誰一人取り残さない村づくり長野県中川村 宮下健彦村長から学ぶ
農業を守ることは地域を守ること農民連青年部は9月26日、学習交流会をオンラインで開催しました。「誰一人、取り残さないあたたかな村づくり〜長野県中川村・宮下村長の挑戦〜」と題して、農民連会員で長野県上伊那郡中川村の村長、宮下健彦さんに、農業と地域の振興策を聞きました。
開会あいさつで平間徹也青年部長は「地元の農政に関わる中で、消費者も農家も農業の価値を見失っているように感じています。一方で運動の力で政治を変えられることも感じています。今日は農民連会員である宮下村長の奮闘を聞き、地域の変革の道を探っていきたいと思います」と述べました。 また農民連本部の吉川利明事務局長もあいさつし、9・24米危機打開中央行動の成果について報告。「地域農業と家族経営を守るうえで自治体の役割は非常に重大になっている。中川村の新規就農支援や農業振興の実践を学び、みなさんで深めていきたい」と話しました。
移住促進で将来の展望開きたい宮下村長は今年の村長選挙で、無投票で2期目を迎えています。天竜川が流れる伊那谷の中央部に位置する中川村は人口約4700人。NPO法人「日本で最も美しい村連合」に加盟。「全村が過疎地域に指定されており、村の産業の基盤は農業。2011年にはTPP(環太平洋連携協定)反対の村民集会とデモ行進を行い『TPP反対の村』として有名になった」と紹介。村の人口は04年以降減少が続き、直近5年は毎年50人ずつ減少しています。「就職、進学等での転出が目立っている。少子化を鈍化させ、移住・定住を推進して、人口減の抑制、持続可能な地域を展望したい」と宮下村長は語ります。 出産祝い金の増額や保育士の加配など子育て支援政策の実施や民家を買い取って障がい者の地域活動支援センターを開設、将来的には農福連携で就労支援事業につなげるなどの政策と合わせ、農業支援策も手厚く実施しています。
農業の振興に 村独自の支援策新規就農者は村長就任以降で3人。さらに現在の地域おこし協力隊の隊員からもこれから3人が就農予定です。また就任してから村独自の農業担い手支援事業を実施し、事業費の2分の1(上限100万円)を補助しています。果樹ではJAの共同選果場が統合され、42キロ先に移転してしまいました。この選果場は35%が中川村からの出荷です。選果場に出荷する農家に1キログラム当たり4円の運搬費用補助を行うことにしました。また果樹共済や収入保険の掛け金にも村の補助を出しています。 移住促進政策ではお試し移住用の住宅を2棟整備しているほか、子育て世帯の住宅取得支援や3世代同居のための新増改築の支援、村営住宅の民間譲渡の制度化を実施しています。
再エネ推進にも独自の施策実施再生可能エネルギー推進でも面白い制度を設けています。高齢者憩いの家に薪ボイラーを導入したほか、「木の駅」を設けて、村民が持ち込んだ軽トラック1台分の木材を、5000円の地域通貨「イーラ(『いいでしょ』の意味)」で買い取り、森林資源の活用と地域経済の活性化にもつなげています。 また、2期目の4年間の政策として、空き家対策や新規就農者のための住居、農業施設、機械の取得支援策、若者向けの住宅の改修など移住や新規就農推進政策、果樹再興のため、経営委譲円滑化の支援などを計画しています。 今後の課題として、宮下村長は「これまで地域農業を支えてきた家族農業者の維持と新しい担い手の育成を同時に進めることや、中山間地域の水田農業の維持の方策、有機農業の拡大をどのように進めるか、学校給食の地場産農産物の活用などをあげました。
熱意があれば保守層にも通じる財政の確保はやりようはある質疑では様々な質問が出ました。「村独自の担い手支援の対象範囲は?」との質問には、「今の支援制度は認定農業者に限定されてしまっているが、地域の農家を守ることは地域を守ることにつながる。支援の上限金額を上げてでも補助が必要。まずは支援で実績を出して支援の範囲を広げていきたい」と答えました。「農業支援重視の政策に対し保守の人からの反発はなかったのか」との質問には「保守の人たちもこのままでいいとは思っていない。首長の熱意が伝われば保守の人も支持してくれる」と回答しました。 「村独自の支援を行っているが、財源はどう確保しているのか」といった質問には「村の財政は地方交付税の交付金が50%以上を占めている。しかし、やりようはいくらでもある。国の制度を勉強し、活用できるものを探してきた。賛否両論あるがふるさと納税の収入も農業振興などに活用できる」と語りました。
(新聞「農民」2021.10.11付)
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[2021年10月]
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