福島原発事故の賠償基準
東電が農民連などの
個人請求を差別
賠償額1/10のケースも
経緯と責任あいまい、再発防止策も未定
経産省 要請で事態を初めて把握
東京電力(東電)が福島第一原発事故の賠償を農協と農民連で差別していたことが分かりました。東電は2019年から「新賠償基準」を一方的に採用し、市場価格をもとに東電が算出した「価格変動係数」を使用して賠償金額を計算しています。この価格変動係数が梨やブドウなどで農協の団体賠償と農民連などの個人賠償で異なる値が使われ、個人賠償の額が不当に低く(5分の1〜10分の1になったケースも)支払われていることが、今年5月、福島県北農民連の指摘で明らかになりました。
福島県農民連は9月27日、政府・東電要請を行い、経緯の説明とこれまでの賠償の見直しを求めました。
 |
東電の責任を追及する参加者(右側) |
東電は、謝罪と差額を支払うことは明言したものの、団体賠償との差異が生まれた経緯や責任の所在、社内のチェック体制などは、まともに回答しませんでした。また参加者から「県民にはこの事態をどう説明するのか」と謝罪会見を要求してもかたくなに拒否。発覚から4カ月が経過しているにもかかわらず、いまだに再発防止策すら決まっていません。
さらに驚くべきことに、経済産業省に事態を認識しているか問いただすと、担当者から「農民連の要請の申し入れがあって初めて事態を把握した」と、とんでもない返答がありました。何と東電はこの事態を経産省に報告すらしていなかったのです。原発事故の被災者に寄り添う姿勢のかけらも見られない異様な態度です。
参加者からは「東電は経産省すら甘く見ている。経産省の指導もこれまでと同じ体制では、もうだめということではないか」と厳しい指摘が相次ぎました。
福島県連は「19年に新賠償基準になって、賠償額の少なさから申請をあきらめている生産者もいる。こうした生産者にも知らせる方法の検討を」と要求。発生した原因や再発防止策と合わせて文書で回答を求め、東電も了承しました。
(新聞「農民」2021.10.11付)
|