米価暴落
農家の「赤字」経営の実態は
稲作農家は「ただ働き」
どころか「持ち出し」に
農水省「米生産費調査」
米価暴落によって農家は「赤字」経営になり、家族労働報酬は「ゼロ」どころか「マイナス」になり、稲作農家は「ただ働き」どころか「持ち出し」になっていることが、農水省の「米生産費調査」の詳細から明らかになりました。
たとえば2014年の生産費は1俵(60キロ)1万5416円で、うち農機や肥料、農薬など、農家が現金支出する「物財費」は9120円、労働費は4035円。ところが、生産者米価は9380円に暴落し、物財費とほぼ同額。
農家は先に物財費を支払わざるをえず、本来生産費を構成している労働費――これが農家の収入源――はねん出できません。
その結果、14年の10アール当たり家族労働報酬はマイナス9424円。10アールに投下する労働時間は24・82時間で、時給換算するとマイナス380円になります。
10アール当たり収量は526キロ。1俵につき1075円の赤字で、農家は身銭を切って1000円札を1枚付けて出荷しているのが実態です。(9424円÷526キロ×60キロ)
労働者の場合、賃金が生活費を賄えないという意味でのマイナスはありえても、賃金がゼロになれば辞めるしかありません。まして、稲作農家のように、労働者が身銭を差し出して働かせてもらうなどということは、絶対にありえません。
同時に、農水省の「米生産費調査」は、「赤字」ではなく「黒字」の場合でも、農家の時給は最低賃金以下だということを示しています。逆にいうと、せめて最低賃金並みの時給が保障されれば、米価は1万5千円になります。
今年の米価は8000〜9000円以上暴落する勢いです。このままでは、農家は1俵出荷するたびに1000円札を2枚付けなければならない――こんな状態を続けられるはずはありません。まさしく稲作崩壊の危機です。
過剰米の買い入れ、政府の責任で米の需給と価格の安定をはかれという要求を実現するためにがんばりましょう。
(新聞「農民」2021.10.4付)
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