グローバル企業の影響力強化
国連食料システムサミット
もうひとつの市民食料サミット
農水省 持続可能でない「みどり戦略」
対案はアグロエコロジーと食料主権だ
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンと日本消費者連盟は9月18日、東京・文京区シルバーセンターで「もうひとつの市民食料サミット」を会場とオンラインでつないで開きました。
大規模・工業型農業に未来ない
日消連の纐纈(こうけつ)美千世共同代表が主催者を代表して、「9月23日に行われる国連食料システムサミットは、農民・市民の声が無視され、グローバル大企業の影響が色濃く出ています。日本でも農水省が発表した『みどりの食料システム戦略』は、みどりとは内実がまったく違うものです。これらに対抗して、私たち消費者と農家で食と農の未来を考えましょう」と開会あいさつしました。
問題提起を4氏が行いました。
千葉県船橋市で農業を営む、農民連の齋藤敏之常任委員は、「みどりの食料システム戦略」が化学農薬・肥料の削減、有機農業の拡大などをうたっている一方で、「国が上から決めた計画を自治体に押しつけ、認定した農家・地域を金融・税制措置で支援するものだ」と批判しました。
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討論に参加する(左から)齋藤さん、安田さんら |
さらに、その「担い手」とは、農地を集積・集約化した一部の農家や「経営体」を認定し、そこに支援を集中させることだと述べました。
「同戦略」が描く「大規模・工業型農業に持続可能性はない」と強調。
「大規模工業型農業は、46億年分の地球の資源を消費することで成り立つエネルギー消費型農業であり、産業革命前までの農業は、地球システムの物質・エネルギーの流れを利用し、地球にやさしい農業だった」と指摘。こうした持続的農業をめざすアグロエコロジーを推進する家族農業を守り発展させる運動が世界的に大きく広がっている。これこそが持続可能だ」と訴えました。
アグリビジネスによる乗っ取り
食政策センタービジョン21の安田節子さんは、同サミット事務総長特使に、ビル・ゲイツ財団が作ったAGRA(アフリカ緑の革命同盟)議長アグネス・カリバタ氏が就任し、AGRAはアフリカに遺伝子組み換え種子、化学肥料、農薬を持ち込むために作られた組織だと指摘。「アグリビジネスによる国連乗っ取り計画だ」と批判しました。
さらに同サミットに、バイエル、シンジェンタ、住友などの農薬企業連合が参画し、さらにゲノム編集やGM作物のほかに、ドローンやデータ管理・利用などスマート農業技術分野の新興企業を買収するなど戦略的提携にあると強調しました。
これらによって「各国の食料安全保障や食の安全が脅かされる」と述べ、地球規模の環境汚染、持続不可能な食料生産、小農民やコミュニティーの破壊がもたらされると警告しました。
農家と消費者がネットワークを
日本スローフード協会代表理事で有機農家の渡邉めぐみさんは、同協会が、(1)サミットに異議を唱え、(2)企業の取り込みを非難し、(3)アグロエコロジーや農民の権利の尊重を含む、すべての人の食料の権利を確保するための解決策を提案していることを紹介しました。
同サミットは、企業が過度に影響を与え、ここには「生物多様性を守り、人間と自然の均衡を保ち続けている小規模生産者の声を反映させる機会はない」と批判。「アグロエコロジーの考え方で農業を続けている小規模生産者が市民とともに連帯し、食料主権を主張し続けることが重要。そのためのネットワークを広げよう」と呼びかけました。
キャンペーンの天笠啓祐代表は、農水省の「戦略」が、農業・食料生産のハイテク・デジタル化をめざし、RNA農薬の使用が盛り込まれていることを指摘。RNA農薬とは、RNAの一種を害虫に投与することで、そのなかの遺伝子の機能を止め、害虫の駆除を目指すものです。
その問題点としては、あらゆる生物で突然死や生物活動の低下・劣化を招く危険性や、生物の繁殖にも影響する可能性があり、生態系をはじめ土壌・腸内細菌、そして食の安全に悪影響をもたらす可能性があると警鐘を鳴らしました。
(新聞「農民」2021.10.4付)
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