IPCC
(国連気候変動に関する政府間パネル)
第6次報告書
気候危機の回避は
時間切れの瀬戸際
関連/極端な気象の増加で世界の飢餓リスク増大
「人間活動で温暖化」は
「疑う余地がない」と断言
地球温暖化の科学的知見を取りまとめる国連の研究者機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、8年ぶりに新しい報告書を公表しました。
報告書では、人間の活動が地球温暖化を引き起こしたのは「疑う余地がない」と断定。さらに、世界各国が温暖化対策を大幅に進めても、産業革命以前と比べた世界の平均気温上昇は、今後20年間で1・5度に達してしまう、と予想しました。
現在の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では気温上昇を2度未満に、できれば1・5度に抑えることを目標にしています。1・5度到達は2030〜52年と想定した前回の報告書より10年早くなってしまうという、厳しい予測となりました。
また、化石燃料への依存が続く最悪の場合には、2100年の気温は5・7度上昇するとした一方で、いますぐ世界各国が排出削減を進め、2050年ごろには排出をゼロにするという想定では、一時的には1・5度を超えるものの、今世紀末には1・4度に戻る可能性があることも示し、残された時間は少ないことを警告しました。
現在、すでに世界の平均気温は、産業革命前と比べて1・1度上昇。大気中のCO2濃度は過去200万年のどの時期よりも高く、ここ50年間の気温上昇は少なくとも過去2000年間で最も早く進んでいます。
こうしたなか、すでに気候災害は現実のものとなっています(表)。1・1度上昇の現在でも、50年に1度の熱波の発生が4・8倍に、10年に1度の豪雨は1・3倍に、農業や生態系に影響を及ぼす干ばつは1・7倍に増加。温暖化が進めば、こうした極端な気象はさらに増えると予想しています。とくに日本を含む東アジア地域では豪雨の頻度と強さが増し、台風の頻度や強さも増すと予測されています。
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この秋は温暖化を止める上で、とても重要な時期になります。一つには、地球温暖化対策計画と、エネルギー基本計画の素案が示され、パブリックコメントが始まりました(締め切り10月4日)。
もう一つは衆議院選挙が行われます。菅・自公政権は温室効果ガスを「2013年比で46%(90年比では40%)削減」との素案を発表しましたが、この目標は、1・5度の目標達成には全く不十分な削減目標であり、さらに今後も原発に依存し石炭火力発電を使い続けようとする内容です。
一方、立憲民主党、日本共産党など野党4党が合意した市民連合の共通政策への提言では、6つの柱の一つに地球環境問題を取り上げ、再エネの拡充や脱原発・脱石炭などが提唱されています。温暖化を止める第1歩として、今年の総選挙は絶好のチャンスとなります。
穀物備蓄の役割、ますます重要に
地球温暖化によって極端な気象現象がさらに悪化したら、世界の飢餓人口にはどう影響するのか――京都大学などの研究チームが、コンピューターによる予測を明らかにしています。
この研究では、温暖化対策を強化しないまま2050年時点で非常に強い不作が発生すると、世界の飢餓リスク人口は、最大限の温暖化防止対策をした場合より2億人多い6億人になると予測。
さらに、この飢餓を避けるためには、1億8000万トンの穀物、金額にすると340億ドル(日本円で3兆8000億円相当)の食料備蓄が必要になると推定しています。これは現在の世界全体の穀物備蓄の約4分の1に相当し、南アジアでは現在の備蓄の3倍に相当する量だということです。
研究チームは、「これらの結果は、温暖化を抑制できないと貧困層に大きな被害がでること、また飢餓を抑えるためには相当の追加的な対応策が必要だということを意味している」と指摘しています。
(新聞「農民」2021.9.27付)
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