リンゴの凍霜害・低温被害
岩手県内全域で深刻化
県農民連が県に支援要請
「ジョナゴールドは収量7割減になりかねない。ふじは半減か…」。実がふくらみはじめたリンゴの木を前に、岩手県二戸市の川上豊さんは肩を落とします。4月の果樹の凍霜害・低温被害が岩手県内全域で深刻化しているのです。
リンゴ農家は被害がなかった実を残すなど、工夫しながら作業を進めていますが、川上さんは「加工用が増えてしまうだろう。加工用は、1箱300円ぐらい(1キログラムあたり15円)」といいます。さらに「例年以上に細やかな摘果」「実にいかない栄養によって徒長した枝の処理」などの手間も。こういった人件費、霜の害で弱くなった芽に対しての農薬散布など、掛かり増し経費も負担です。
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川上さん(左)と二戸農民組合の田口一男組合長 |
黒星病・ひょう害被害も深刻化
岩手県農民連が全県で行っている調査では、凍霜害と別に「黒星病」の被害が深刻化しているという声も寄せられています。さらには県南では6月にひょうの被害も。県の調査(7月30日現在)でも霜による県内の果樹被害は21市町で10・1億円,ひょうによる被害は10市町で5・1億円にのぼっています。
これをうけ、県農民連は7月12日に県に対して果樹凍霜害に対する支援を求める要請を行いました。
県は「復旧事業を準備しており、掛かり増し経費への支援をする」と回答。8月に入り、霜・ひょう被害に関わる薬剤・カルシウム剤・花粉の購入費を補助するという事業内容を発表しました。しかし残念ながら、減収分については「果樹共済や収入保険で対応してほしい」とのことで、復旧事業の対象とはなっていません。
農民連本部が7月30日に行った農水省への要請で、花巻市の藤原清吉さん(花北農民組合事務局長)は「果樹共済も収入保険も加入要件が厳しいのに、いざというときの交付が不十分。自分も含めて加入できていない人が多い」と実態を訴えました。
県農民連では共済・収入保険の加入・支払い要件を改善すること、そして今年・来年の緊急対策を求め、引き続き運動を強めていきます。
(岩手県農民連事務局長 岡田現三)
(新聞「農民」2021.8.30付)
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