待たれている食料支援
今こそ国の責任で食料支援制度を
対談
学生支援で奮闘中
日本民主青年同盟 西川龍平 中央委員長
農民連 長谷川敏郎 会長
コロナ禍でアルバイトがなくなるなど、学生・青年の生活が困難になる中、日本民主青年同盟(民青)が学生向けの食料支援活動を全国で展開し、9万人以上が利用しています。農民連は民青の食料支援に、食料品の提供などで協力しています。
民青中央委員会の西川龍平委員長と農民連の長谷川敏郎会長が対談しました。
(対談日8月6日)
“食べる”は権利だ!
食料支援は自己責任論のりこえる運動
コロナで深刻化する学生の困窮
長谷川会長 今、米農家はコロナ禍による米価暴落で苦しんでいます。一方で「食べたくても食べられない人」が大勢いると聞き、農民連は各地で食料支援などに取り組んできました。米を食べられない人がいる一方で、米を作るなという政治の矛盾が明らかになってきました。
民青同盟のみなさんは食料支援に取り組むなかで、仲間を大いに増やしたと聞いています。今日は、青年・学生のリアルな現状をうかがって、ともに取り組めることを考えていきたいと思います。
西川委員長 農民連のみなさんに各地で食料支援活動にご協力をいただき、ありがとうございます。この場を借りてお礼を申し上げます。
コロナ禍以前から生活が苦しい学生は多く、アルバイトをすることが生活の前提でした。コロナ禍でバイトが失われ、でも学費はほとんど減免がありません。家賃もまけてもらえず、結局は食費を削ることになります。1日1食しか食べていない学生や、ある県では会うたびにやせていく学生もいたそうです。
支援活動の当初はカンパで食品などを購入して配布していましたが、支援がつながるなかで農民連から食料が寄せられるようになりました。
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対談する西川委員長(右)と長谷川会長 |
大変喜ばれているお米と野菜
長谷川 提供した食料品の反応はいかがでしょうか?
西川 お米は主食ですし、日持ちしておなかも膨れることから大変喜ばれています。また、日持ちのしない野菜などの生鮮食品はこちらで用意するのは難しいので、農民連のみなさんが送ってくださって本当にありがたいです。
学生や青年のあいだには自己責任論が根強くあります。当たり前の支援行動なのに、訪れた学生は「申し訳ない」と言います。生活が苦しいのは自分のせいだと思わされているのです。食料支援はこうした新自由主義に基づく自己責任論を乗り越えるたたかいでもありました。
また、食料支援活動を行って、「お金の心配なく食料を選べることの大切さ」を感じており、学生が適切な食事がとれるよう継続的な支援が必要だと思います。
学生の県要請で予算化勝ちとる
長谷川 日本は生活困難者への食料支援制度がまったくない国です。生活が苦しい人ほどジャンクフードに頼り、身体を壊していきます。支援としてお米券を配布すれば支援会場まで来ることなく、近くのお米屋さんで米を手にすることができます。こうした制度を作ってはどうでしょう。
西川 学生の困窮の原因になっているのは学費を国が引き上げてきたからです。政治が学生の困窮を作ってきたのです。民青はこうした実態を発信してきました。
学生・青年自身も「学生が貧しいのは当たり前」という考え方から抜け出し、「おかしいものはおかしい」と声を上げられるようになりました。
徳島県では支援を重ねながら県要請を行い、5月の県補正予算で1200万円の学生支援費を計上させました。私たちは以前から省庁、県庁要請を行ってきましたが、食料支援を行うとともに社会を一緒に変えようと訴えられるのが、民青の強みだと思います。
長谷川 私たちも農水省に対し、繰り返し「過剰米を食料支援に」と訴えてきました。わずかに動かすことはできましたが、農水省は「厚労省の仕事」という態度です。
西川 公助を求めていく運動が大切ですが、自民党政権の下では限界があります。選挙で変えていく必要があります。
「政治は変わらない」と言う人も政治に興味や関心を持っています。学生は「努力が足りないから生活が苦しい」という自己責任論から「貧乏は自己責任ではない」と抜け出しつつあります。
地域の農民連と民青で懇談を
備蓄米を運用し支援の制度化を
長谷川 農家も自己責任論を押し付けられていますが、日本農業新聞の農政モニターで「自民党農政を大いに評価する」と答えたのはわずか1%。農村を変える希望は見えています。
国の備蓄米は本来、需要の3カ月分に相当する200万トンが必要ですが、国はミニマムアクセス(MA)米77万トン輸入することを前提に、国産米の備蓄を100万トンに削減。コロナ禍で需要が減少し、農家に史上最大の36万トンの減反を押し付けながら、MA米の輸入は聖域扱いです。
備蓄米を適切に運用すれば、米価は安定します。米価が暴落して生産費を割り込めば、米作りは続けられず、都会で学校に通う子どもへの仕送りもできません。
西川 青年自身、他の分野の人びとに目を向け、実態を学ぶことも大切ですね。私は北海道出身で、母方は開拓農民、叔父が農協です。それでも農家の実態や経営状況はよくわからないところがあります。
長谷川 農業をしながら、家族がほかの仕事でも稼いできて、営農を支えている。50年間も減反政策で「米を作るな」と言われ、企業なら投げ出すような状況の中でも、「国民の食料を守るため」と負けずに作り続けている。すごい抵抗力であり家族農業の強さだと思います。その家族農民の持つ力が、国連をも動かし、「家族農業の10年」になりました。
西川 ブックレット『国連家族農業10年』を読ませていただきました。農民連の運動はまさに世界の本流だと思います。
青年は各分野の運動で国際的な活躍をしていますが、運動の国際連帯組織がない状況です。しかし強く大きな青年運動があってこそ、あらゆる運動分野に人が育っていくので、青年運動の発展は今後のためにも重要だと思います。
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千葉県での食料支援 |
新しい共同の力で組織も元気に
長谷川 島根では食料支援がきっかけで、民青の同盟員がいなかった大学に新しく班ができたと聞いています。そこに地域の農民連会員が支援物資を届けています。
食料支援を通じて新しい連帯が広がりつつあります。食料支援制度を作らせて、運動をさらに発展させたいものです。
西川 私たちの支援活動は、最低限の食料や日用品の支援にとどまっています。適切な栄養価の食事や、女性の生理用品を含めた、日用品の配布など、支援制度を作り、中身を充実させるために、国や自治体に働きかけていきたいですね。
長谷川 「食への権利」は国連人権宣言に基づくもので、子どもや青年にしっかり食べさせるのは社会の責任です。民青と農民連が、もっと地域で交流ができればいいですね。組織も元気になるし、民青の若い人たちが訪問してくれれば、農家は大いに力をもらいますし、民青の取り組みにも喜んで協力します。ぜひ、今度は地域で共同の懇談を進めましょう。
(新聞「農民」2021.8.30付)
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