全国研究交流集会
持続可能な地球・食料主権の実現へ
アグロエコロジー運動を広げよう
農民連
多彩な実践、各地から
科学と技術、運動を結びつけ
「アグロエコロジーの考え方と取り組みについて整理ができました。石川農民連が30年にわたって取り組んでいる産直がまさにアグロエコロジーなのだと思います」(石川農民連の宮岸美則会長)――。農民連は8月5日、全国研究交流集会をオンラインで結んで開きました。44都道府県、150カ所で300人以上が参加しました。
長谷川敏郎会長が主催者あいさつ。「アグロエコロジーは生態系を守り、その力を活用して農業と食料を守る運動。持続可能な地球を取り戻すうえで待ったなしの課題です。みんなでよく学び交流しましょう」と呼びかけました。
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本部であいさつする長谷川会長 |
特別講演を近畿大学名誉教授の池上甲一さん(家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン常務理事)が「小農・アグロエコロジー・食料主権の三位一体性」をテーマに行いました。
科学や技術、運動と結びついた持続可能な農業の実践がアグロエコロジーの基盤にあり、家族経営の農家が主体となって食料主権実現を目的にするのが重要だと指摘。それぞれの地域に合った独自のアグロエコロジーをつくり出す必要性を訴えました。
さらに家族農業とは、経営規模の大小ではなく、利潤追求よりも、家族や地域の持続性を重視する主体だと述べました。
今後、農民組織としてどう取り組むのかについては、企業的な食と農のシステムの問題点を明らかにしつつ、「消費者、市民と一緒に考え、行動することが大事だ」とし、アグロエコロジーを進めやすい制度・政策づくりでの行動に期待を述べました。
農家と消費者が手を結んで
各地からの実践報告があり、和歌山県の貴志正幸さん(和歌山市農民組合組合長)と満留澄子さん(新日本婦人の会県本部事務局長)が、地元産無農薬小麦を使った学校給食パンを実現した取り組みを紹介。新婦人県本部が、輸入小麦のパンから除草剤グリホサートが検出されたという農民連食品分析センターの調査に衝撃を受け、県学校給食会との懇談で国産小麦のパンに切り替えるよう要請しました。
その後、パン用小麦を栽培していた貴志さんの協力を得て、「給食スマイルプロジェクト〜県産小麦そだて隊!」を立ち上げ、収穫祭や草刈り体験会などのイベントを主催。地元メディアにも取り上げられ、県の「農業農村活性化支援モデル事業」にも指定され、4人の小麦生産者が学校給食に提供しています。
今後、国や自治体のさらなる支援拡充を求めながら、増産を図る決意を述べました。
栃木県の國母克行会長と新婦人宇都宮支部常任委員の平野芳子さんが「有機農業と産直で交流」のテーマで報告。國母会長は、自分や家族の健康を考えて無農薬、有機栽培を始め、その農産物は、マルシェや直売所などでの販売を通じて知り合った消費者、新婦人の会員に販売しています。新婦人とは食の安全の勉強会や意見交換で協力し合っています。平野さんは、新婦人の会員も直接生産現場に出向き、生産者の思いを聞き、自分たちの要求を生産者に伝えていることを報告しました。
國母会長は「家族農業の実践で環境に負荷をかけずに安全な農産物を生産したい。遺伝子組み換えやゲノム編集などバイオ化学企業に対抗するためにアグロエコロジーを実践したい」と決意を述べました。
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参加者全員で各地域での奮闘を誓い合いました |
地域経済と環境をともに守る
山形おきたま産直センターの竹田久一組合長が、田んぼに消費者を招き、どんな生きものがどのように生息しているのか、などを一緒になって調査し、学び合う田んぼの生きもの調査を紹介。「青年たちが『生きもの調査隊』として活動を進める中で、はじめは無関心だった農家も生きものが豊かな田んぼづくりに精力的に取り組むようになった」と説明しました。
さらに、ほとんどの農家が国の「環境保全型農業直接支払い交付金」を使って調査を実施していることを語り、「低米価のもとで交付金が経営上大いに役立っている。もっと制度を拡充するよう国に働きかけを」と訴えました。
熊本県の大矢野有機農産物供給センターの松田浩二専務は、自然環境を守りつつ、持続可能な農業をめざし、広範な人々との輪を広げ、地域の農業、ひいては日本の農業を守る運動を進めることなど同センターの基本理念を紹介。
栽培は、化学合成肥料、農薬の使用を可能な限り減らし、共同で自家製ボカシ肥料をつくり、ショウガ、玉ねぎ、里芋などでJAS有機認証やグローバルGAPを取得しています。品質向上対策として、土壌分析検査実施による適正施肥、温州みかんの糖度検査などを実施しています。
生産の安定と増収の努力のほか、生協組合員、消費者と生産者との交流を通じて、「自然との触れ合い、癒しの場を提供していきたい」と結びました。
福島県農民連の根本敬会長が「あだたら食農Schoolfarm(スクールファーム)」の取り組みを報告。生産者、消費者が共に学ぶ場を提供し、安心・安全で持続可能な農業を目指しています。冬場は座学が中心で、春から秋にかけて農場実習や収穫物の流通システムを学んでいます。
実習生は現在54人で、その7割が30〜40代の女性。その多くが夫や子どもも同伴して参加しています。耕作放棄地を活用した農場では、有機・不耕起(耕さない)の2つの栽培方法を比較しながら実習しています。5月は支柱を組んで生食トマトの苗を定植する作業を行い、「ゆいまある」と共同でジュース用のトマト苗も植えました。
根本会長は「スクールファームを資源と経済の地域内循環を図るアグロエコロジーの拠点にしていきたい」と述べました。
総選挙で農政の転換を
常任委員会からの報告を吉川利明事務局長が行い、「工業的食農システムか、持続可能な農業・アグロエコロジーの推進かが鋭く問われている。総選挙で家族農業を中心とした農政の転換のためにも野党連合政権を実現しよう。新聞『農民』号外、のぼりを活用して、『米危機打開、全国一斉キャラバン』を成功させよう」と呼びかけました。
笹渡義夫副会長が「アグロエコロジーを旗印に、さらに実践を広げ前進しよう」と閉会あいさつしました。
(新聞「農民」2021.8.23付)
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