シンポジウム
家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン
持続可能な農と食をテーマに
若手農林漁業者が語り合う
家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)は7月27日、オンラインシンポジウム「若手農林漁業者の提案!〜日本から世界へ発信する持続可能な農と食〜」を開きました。
冒頭、FFPJの村上真平代表が「SDGs(持続可能な開発計画)達成のために国連『家族農業の10年』は重要な提起だ」と述べ、家族農林漁業が健康や地域を守るのに重要な役割を果たしていると強調。「今回のシンポで、若手農林漁業者の報告を聞き、私たちが持続可能な生き方をするために心新たにしたい」と述べました。
FFPJ常務理事の関根佳恵さん(愛知学院大学准教授)は、10月に行われる世界食料フォーラムに向けて、小規模・家族経営の若手農林漁業者が、持続可能な農と食について議論する意義を語り、「若手が生業、くらし、日々の思いを語り合うことにより、政府が進める大規模・法人化の道を再考する機会にしよう」と呼びかけました。
5人のパネリストが報告しました。要旨を紹介します。
チャルジョウ西会津農場の小川美農里さん(福島県西会津町)
「生態系を生かす有機農業を実践・指導し、地域の活性化をめざす」というのが農場の理念です。取り組む農業の最大の特徴は、水をやらずに施設野菜を栽培する無潅(かん)水栽培です。
オリジナル品種のメロンとミニトマト、カボチャ、在来インゲン、ナス、ズッキーニ、食用ホオズキ、雑穀などを栽培。自家採取や在来種の栽培もしています。
廃校になった木造校舎を改修した宿泊施設「ダーナ・ビレッジ」では、「健康回復とじぶん発見」をテーマに、収穫体験、ヨガ、ヒーリング、メディカルハーブのワークショップなど体験型のイベントも行っています。
ちぃっとらっつ農舎の杵塚歩さん(静岡県藤枝市)
「ちぃっとらっつ」とは地元の方言で「少しずつ」という意味です。私たちの暮らす農村の風景や伝統、文化は「ちぃっとらっつ」の繰り返しから生まれ、継承されてきました。
ここでは、季節にあった作物をつくることで地域の多様性が守られ、地域のものを大切に使いながら暮らしていくことで、環境が守られます。
山間の畑には大小様々な生き物が行き交い、農薬・化学肥料に頼らなくても豊かな生態系が田畑を守ってくれます。
ちぃっとらっつ農舎は小さな農家です。小さい規模で様々な作物を栽培し、その地域の豊かさを農作業を通して表現していきたいと思っています。
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杵塚さんの報告画面から |
1年を通し、農を通して、里山と都市部を結ぶ取り組みも行っています。地域に根差した農業で世界に発信し、ジェンダー平等について考え、世代間の交流も進めています。
「ONE TREE」(ワン・ツリー)の天野圭介さん(静岡県浜松市)
人の暮らしと環境がともに豊かになることを願い、樹木の手入れや屋敷、里山などの環境整備、微生物技術による環境浄化、持続可能な林業などを実践中です。
「循環」をテーマとし、永続可能な暮らしを軸に活動しています。
木々は私たちの暮らしに必要な様々な恵みを与え続けてくれています。木を切ることは一瞬ですが、木を生かすためには様々な配慮と経験、技術が必要です。「ONE TREE」では、木の健康状態や生育環境、周辺環境などをしっかりと観察し、そこに生きている木々を最大限生かし、人と木々が共に豊かに暮らせる環境づくりに取り組んでいます。
さらに、複合発酵技術を利用したバイオトイレ「あうんユニット」を使用し、ふん尿を発酵合成して土へ返し、お米や野菜、果樹栽培、堆肥づくり、酵素水づくりを実践しています。
千葉県沿岸小型漁協の澤大輔さん(御宿岩和田漁業協同組合)
10月から翌年6月までキンメダイ漁をしています。
2005年前後から、イカやカツオなど回遊魚資源が減少・変動しています。
持続可能な漁業とは、産卵期の漁獲禁止、親魚の保護と幼魚の保全、漁獲量の制限にあります。
魚価の維持のためにブランド化を進め、地元の食文化を通した町づくりを支援していきたい。
千葉県沿岸小型漁協の岡崎良平さん(鴨川漁業協同組合)
現在の魚介類資源を維持していくために必要なのは、科学的なデータに基づく自主的な資源管理と漁業者の全国規模での組織化を複合的に行うことです。
今後、問題になってくるのは、大型船によるカツオやスルメイカなどの乱獲です。さらに温暖化で海藻が消失していることです。
漁業資源を守り、豊かな海を維持することができれば後継者問題も解決できると思います。
(新聞「農民」2021.8.9付)
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