「農民」記事データベース20210802-1467-01

アメリカのわずか0.4%

日本の食料支援対策は
並はずれた貧弱さ

消費者庁の調査で浮き彫りに

 コロナ禍のもとで「1日1食」に切り詰めるなど、「食べたくても食べられない」人たちが増えており、国と自治体、フードバンクや子ども食堂など、官民合わせた食料支援が切実に求められています。


コロナ禍に苦しむ人々に
食料支援策を一刻も早く

 日本の食品寄付はアメリカの0・4%

 ところが、今年6月に公表された消費者庁の委託調査で、日本の食料支援対策の並はずれた貧弱さが浮き彫りになりました。同庁の「諸外国における食品の寄付の実態等に関する調査」によると、フードバンクへの食品の寄付量はアメリカの739万トンに対し、日本は2850トンで、わずか0・4%にすぎません(表1)※1

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 フードバンクは、寄付された食品を一人親世帯(シングルマザーなど)や高齢者世帯、障がいのある方など生活困窮者に無償で届ける活動を行っている非営利団体です。50年前にアメリカで誕生し、日本では20年前に活動がスタートしました。

 フードバンクは食品企業や小売企業、農家や市民からの寄付に頼っている活動であり、資金・食品・運営費の不足は米欧日共通の悩みです。

 しかし、アメリカやフランスと日本の決定的な違いは、公的支援の有無です。

 表1のように、アメリカやフランスでは、フードバンクが集める食品のうち約3割が政府の提供によるものです。また、食品の寄付に対する税制優遇も、運営費に対する助成も充実しています。公的支援をともなう恒久的な食料支援制度がないのは日本だけです。

 日本の食品寄付がケタ違いに少ないのは、このためです。

 苦しむ国民と農家を放置する冷血政治

 コロナ禍のもと、食料支援を実現する必要性は一挙に高まっています。

 「フードバンクかながわ」の報告書(20年6月)は「余剰食品が出る一方、臨時休校で昼食を用意できない家庭の子どもたちへのお弁当配布・食品提供を行う子ども食堂、行政・社協の緊急食支援、地域のフードバンクなどに多くの食品要請があった」と報告し、「余剰農畜産物の公的買取りとフードバンク・子ども食堂等に支給する仕組み」づくりを提言しています。

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「一番ほしいと言われるのがお米です。公的な支援制度が絶対に必要です」とボランティア(今年6月、東京・練馬のフードバンクで)

 また、農水省は、民主党政権時代の2010年に公表した報告書で「日本においても余剰農産物等をフードバンクに回すことができるような仕組みづくりについて検討の余地がある」と指摘していました。

 しかし、菅政権は“米の緊急買い入れは備蓄制度の趣旨に反するから断固できない”と言い張っています。

 6月26日に開かれた自民党「農業基本政策検討委員会」では「政府備蓄米の緊急買い入れで早急に50万トンを隔離すべきだ」という意見が噴出。コロナ禍で数十万トンの米過剰が発生し、農家は米価暴落に直面しているのですから当然のことです。

 菅政権は、なぜアメリカのように、フードバンクや子ども食堂などを通じた人道支援のための政府買い入れさえしないのか? 苦しむ国民、苦しむ農家を放置する冷血政治と、国民の命を危険にさらしてでもオリンピックを強行する暴走政治は共通しています。


国や都道府県、市町村へ
国民的運動を広げよう

 “飢餓・貧困は海外のこと”と思われがちですが、日本にも飢餓と貧困はあります。

 表2に貧困・飢餓についてのデータを示しましたが、ここからいえるのは、(1)子どもの7人に1人が貧困状態にある、(2)とくに子どもがいる一人親世帯の貧困率は50%を超えており、OECD(経済協力開発機構)諸国中最悪、(3)食料困窮、つまり食べるものがないと感じた経験がある世帯が7世帯に1世帯あり、子どもがいる一人親世帯では4割近くに達していることです。

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 これはコロナ以前のデータです。コロナ禍が発生するもとで、状態がますます悪化していることは、NGOのシングルマザーのアンケートからも明らかです。食料困窮を感じる人が30%、フードバンクを利用したい人が58%、しかし現実に利用した人は4%にすぎない……。

 これ以上、冷たい政治を続けさせるわけにはいきません。

 農民連と食健連は、コロナ禍で増えている生活困窮者への食料支援策を、省庁の枠を超えて緊急に実施させる運動を政府に迫るとともに、都道府県や市町村にも独自の支援策を求めて、個人・団体の署名など国民的な大運動を呼びかけています。


【訂正】 9月6日号にて、以下の訂正がありました。
 8月2日付1面「日本の食料支援対策は並外れた貧弱さ」の表1「貧弱! 日本の食料支援対策」のなかの日本政府の支援で、「備蓄米総量91万トンのうちわずか0・2%」となっているのを「0・002%」※1に訂正します。
 2021年9月13日、訂正しました。

(新聞「農民」2021.8.2付)
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2021年8月

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