「農民」記事データベース20210719-1465-10

印鑰(いんやく)智哉さんと考える

アグロエコロジーと
食と農の現在・未来
(7)

歴史的背景と有機認証から見た
アグロエコロジーと有機農業


グループでの実践重視
「参加型認証」を日本でも

 アグロエコロジーと有機農業とは違うものでしょうか? 現在はこの2つを分ける必要はなくなりましたが、両者が異なる歴史的背景から生み出された経緯は押さえておく方がいいでしょう。

 アグロエコロジーは伝統的農業の実践からその考察がスタートしたことからもわかるように、コミュニティでの実践に重きを置いています。メキシコの先住民族がコミュニティで行ってきたチナンパ農法(沼地の水草や泥を生かした農法)がそうであるように、コミュニティの実践が背景にあります。

 それに比べ、特にヨーロッパなどで発展した有機農業は、個人主義的な要素が強い傾向があります。

 農家負担小さく相互に高め合う

 有機農業の認証では個々の農家が書類を作成し、第三者認証機関に認証を求めます。これに対して、アグロエコロジーでよく使われるのは「参加型認証」と言われるものです。参加型認証では当の農家だけでなく、近くの農家、消費者、流通企業の関係者もその認証に参加して、互いの視点からチェックします。

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図 参加型認証と産直提携

 有機の第三者認証は作成する書類も膨大であり、認証機関に払う金額も安くはありません(年間数万〜20万円弱)。個々の農家には重い負担がかかります。

 これに対して参加型認証は手間こそかかりますが、個々の農家にかかる負担は小さくなります(年間数千円)。要するに認証をみんなでやる分、個々の農家の負担は減ります。

 さらに参加型認証には第三者認証にないメリットがあります。第三者認証では、認証機関が農家にアドバイスすることは許されていません。一方、参加型認証では農家相互にアドバイスしたり、改善点をお互いに発見したり、消費者の視点を入れたりすることが可能です。つまりお互いが高め合うことができる制度と言えます。日本の産直提携に近い方法です。

 グループでやることのメリットが大きく、経済的負担も少ないため、参加型認証はインドやブラジル、フィリピンでは急速に広まっており、驚くべきスピードで有機農家が増えています。そして地域の連携もそれと同時に強くなっていきます。国際有機農業運動連盟(IFOAM)もその意義を認め、参加型認証を取り入れました。

 アグロエコロジー推進の力にしよう

 こうして有機農業もアグロエコロジーも分けて考える必要はなくなってきました。しかし、日本政府はいまだ参加型認証をより劣った認証方法とみなしており、日本では十分生かされていません。日本でアグロエコロジーを進めるためには変える必要があります。

(新聞「農民」2021.7.19付)
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2021年7月

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