インボイス導入はやめよ
北海道の酪農地帯では
ヘルパー、獣医師、人工授精師…
地域を支える個人事業主が窮地に
2023年10月に消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入が予定されています。6月21日付の新聞「農民」で紹介したように、農業をはじめ多くの分野で悪影響を及ぼしかねません。
生き物が相手の酪農家は年中無休で仕事がありますが、さまざまな理由で休みが必要な場合があります。その時に酪農家に代わって牛の世話をするのが酪農ヘルパーです。
酪農ヘルパーは利用組合や農協に所属する人と、個人事業主として独立して働いている人がいます。「大規模化などでヘルパーの需要は多くなっています。利用組合のヘルパーでは対応できないケースもあり、個人事業主のヘルパーなしでは地域の酪農は成り立ちません」と北海道別海町の酪農家、岩崎和雄さん(北海道農民連釧根地区協議会議長)は話します。
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放牧される牛たち(北海道・浜中町) |
問題は個人事業主のヘルパーは多くが免税事業者であり、このままではインボイスが発行できないということです。これまでは業務委託契約でヘルパーにお願いし、消費税の仕入税額控除を適用してきました。インボイスが導入されれば、ヘルパーに課税事業者になってもらうか、仕入税額控除をあきらめるという選択を迫られます。「ヘルパーがインボイスの登録事業者を選択すると納税負担だけではなく7年間の保存義務のあるインボイスの実務負担も重くのしかかります。酪農家もヘルパーも大きな負担増です」と岩崎さん。
「人工授精師や獣医師にも個人事業主が多くいます。こうした人たちが地域の酪農を支えており、インボイス導入で地域全体が大変なことになりかねません。しかし、JAは全く動こうとしていません」と懸念しています。
(新聞「農民」2021.7.12付)
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