農民連会員の宮下健彦さんが
村長務める中川村の農業振興策
村独自で多彩に手厚く
担い手と家族農業を支援
長野
長野県南部の中川村は人口約4800人の中山間地の農村です。果樹栽培が盛んで、りんご・梨、ぶどう、桃、梅、柿などいろいろな果物が栽培されています。
今年4月に村長選挙が行われ、農民連会員でもある現職の宮下健彦さん(66)が無投票再選しました。
4年前に初当選した宮下村長は村の基幹産業である農業の振興にも力を入れ、さまざまな施策を行ってきました。その一部を紹介します。
|
ぶどう畑で作業する宮下村長 |
担い手支援
機械や施設の導入に
事業費の1/2を補助
人・農地プランに位置づけられた中心的経営体で認定農業者、認定新規農業者に対し、農業機械・施設等の導入に最高100万円の補助をする制度があります。補助対象となる事業内容は、(1)売上高の拡大、経営コストの縮減など経営発展を図るとりくみ、(2)農業経営に必要な機械、施設等の取得または改良。例えば、(1)トラクター、コンバイン、乗用草刈機、果樹防除機(SS)などの農業用機械の購入、(2)選果機、農産物加工施設、乾燥調製施設などの設備の取得、(3)ビニールハウス、りんご果樹棚(トレリス)、ぶどう・梨等の平棚などの施設整備及び改良――などです。補助率は、事業費の2分の1以内で上限100万円です。
2018年度に制度を新設し、現在までの3年間で9件、総額約850万円の支援を行ってきました。
果樹共済掛金
村が農家負担の30%を補助
近年果樹栽培をとりまく自然状況は厳しく、地球温暖化の進行とともに異常気象による自然災害(凍霜害・台風・長雨等)が毎年のように発生しています。災害が発生した場合、行政として農家に直接支援するのは難しく、公的保険である「果樹共済」や「収入保険」で対応することとなります。
果樹共済の掛け金は、国が共済掛金の2分の1を負担し農家が2分の1を負担しています。農家は農家負担掛金に賦課金(事務費)が加算され、農家にとっての「果樹共済掛金」とは賦課金を含めたものです。中川村では今まで果樹共済の掛金補助は農家負担掛金の20%でしたが、これを改定し「農家負担掛金+賦課金の30%補助」に引き上げました。
県内には50%補助する自治体も
NOSAI長野によると、長野県の状況は、77市町村の中で51市町村が果樹共済掛金補助を行っています。このうち賦課金を含めた掛け金に対しての補助は中川村を含め15市町村、農家負担掛金のみの補助は36市町村となっています。補助率の高いのは塩尻市と小布施町の50%補助(農家負担掛金+賦課金)、朝日村の45・8%補助(農家負担掛金+賦課金)、安曇野市の33・3%補助(農家負担掛金+賦課金)などで、中川村の属する上伊那郡下の市町村は農家負担掛金のみの20%補助となっています。
共済も収入保険も改善点は残る
万が一の時の果樹共済ですが問題点もあります。ひとつは3割以上の被害がないと対象とならないこと。また、2022年度から特定の災害(凍霜害・ひょう害・台風)のみが対象の3セット方式と園地ごとに対象となる園地方式が廃止され、「減収総合方式」のみとなることです。これにより掛け金が増額となる見込みです。
廃止の背景には近年、集中豪雨や台風による自然災害が多発していることから、これに対応した「減収総合方式」のみとし、また収入保険発足に伴い加入促進を図るためと考えられます。収入保険も加入できるのは青色申告を行っている農業者のみということで制度的に問題があります。
収入保険
保険料の50%を補助
新規も継続も対象に
2019年1月にスタートした「農業経営収入保険(収入保険)」の農家負担の保険料に50%補助するもので、2021年産加入のものから対象となりました。
農家が負担する「保険料」は、保険料、付加保険料(事務費)と積立金(積立方式にに加入する場合)の合計額ですが、このうち中川村では「保険料と付加保険料の合計額」の50%を補助します。
保険料補助を実施している市町村は長野県で16市町村あります。補助率が高いのは80%補助が須坂市(限度額あり)と松本市(新規加入のみ)で、50%補助は5市町村ありますが、新規加入のみは3市町村、「保険料の50%」が2市町村です。新規・継続加入とも対象で「保険料と付加保険料の合計額の50%」は中川村だけとなっています。
農業は村の“基幹産業”育成を進めたい
2期目がスタートした宮下村長は、「意欲的な農業経営者、農業法人の育成を図るとともに、村の大部分を占める家族農業の経営継続を支援する施策を行い、村の基幹産業である農業の育成を進めたい」と抱負を述べています。
(長野・中川農民組合事務局長 北島真)
(新聞「農民」2021.7.12付)
|