「農民」記事データベース20210621-1461-01

課税農家 免税農家 産直組織

営農破壊のインボイスは中止せよ

全ての農家・団体の経営を直撃

 2019年の消費税増税と複数税率導入にともない、インボイス(適格請求書)制度導入が予定されています。23年10月の適用開始に向けて、今年の10月1日から、インボイスの登録申請が始まります。
 インボイス導入は家族農家とその営農を守ってきた産直組織の経営を直撃する大問題です。総選挙でインボイスは延期・中止させましょう。


 インボイスで経営の危機に

 消費税の納付税額は、売り上げの消費税額から、仕入れの消費税額を差し引いて計算します(式1)。仕入税額を差し引く時に、制度導入後、必要になるのが「インボイス」です。インボイスは課税事業者で税務署に登録した事業者以外発行できません。

 インボイスは一見、売り上げ1000万円以下の免税農家には関係のない話に見えますが、実はすべての農家に大きな影響を与えます。

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 産直センターの生産者の多くが免税事業者です。これらの免税農家からインボイスが発行されなければ仕入れ分の消費税を産直センターが丸々負担することになり、経営を直撃します(図1)。本則課税の産直センターは生産者に課税事業者になってもらうか、負担増を受け入れる厳しい選択を強いられます。

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 免税の農家が課税強要される

 課税事業者の小売店や飲食店でも産直センター同様の問題が起こり、それが生産者にも大きな影響を及ぼします。

 生産者が、飲食店や小売店、スーパーなどに出荷する場合、相手が消費税課税事業者(簡易課税は対象外)であれば、仕入税額控除を行うためインボイスが要求されることになります。

 インボイスが発行できるのは消費税の課税事業者のみです。しかし日本の販売農家の約9割は免税事業者です。免税農家は、取引先から課税事業者になるか、消費税分の値下げを要求されることになり、できない場合は取引から排除されかねません(図2)

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 また、資材等の仕入れ時に地元の免税事業者から購入すると、インボイスが発行されず課税農家は仕入税額控除ができません。また、酪農家がヘルパーを頼んだ場合にも同じことが起こりえます。出荷にも生産にも大きな影響が出かねません。

困るのは農家だけじゃない
中小業者みんなに大打撃

 農家と同様の選択を強いられる業種は多々あります。6月4日に国会内で行われた「消費税インボイス制度実施は延期・中止に!」緊急集会では農民連ふるさとネットワークや全商連、全労連、東京土建と並んで、呼びかけ人に東京青年税理士連盟、新宿税理士政治連盟、税経新人会全国協議会、一般社団法人日本エンターテイメント連盟などが名を連ねました。

 集会では各業種から苦しい状況が語られています。「個人タクシーは零細事業者が多い。コロナ禍で1日走っても3000〜5000円で、ただでさえ納税が大変。こんな中でインボイスを導入する国のやり方は汚い。京都の個人タクシーの7団体のうち6団体がインボイス反対の団体署名に応じてくれた」(京都個人タクシー互助協同組合)。

 「インボイスが導入されると、中小零細の免税事業者である一人親方が、仕入税額控除ができないと取引から排除されたり、値引きを強要されかねない。課税事業者となっても実務負担が大変になる。このままでは免税点制度がつぶされてしまう」(全建総連東京都連)。

 「サーカスクラウン、大道芸人、タップダンサーなどは9割以上がフリーランスの免税事業者で、企業やイベント業者など課税事業者と直接契約して出演している。インボイスが導入されると契約に支障をきたすため、課税事業者となることを強いられかねない。コロナ自粛の正当な協力金ももらえず、理不尽な税負担を強いられている」(日本エンターテイメント連盟)。

 従来の枠超えて運動を広げよう

 インボイス制度の導入は日本中の中小零細事業者に大きな悪影響をもたらします。また、日本税理士会連合会など多くの税理士団体からも見直し・延期の提言が出るなど、インボイス制度の廃止は従来の枠を超えた運動となっています。

 集会で湖東京至税理士は「国税庁は免税事業者の75%、370万人以上が課税事業者を選択するとみている。残った事業者も転・廃業を選択し、免税制度自体が無意味になりかねない。そうなった韓国では、すべての決裁がデジタル化で国税庁に収集され、付加価値税の申告書も記入済みの申告書が国税庁から送られてくる。事業者と消費者のプライバシーも申告納税制度も失われる入り口がインボイスだ」と警鐘を鳴らします。

 与党内からも見直しの声が

 この集会には立憲民主党と日本共産党のほか、与党自民党からも国会議員が参加してあいさつしました。自民党の内部からも導入中止を求める意見が出るなど、導入の延期・中止の可能性は十分にあります。

 営農破壊のインボイスを来る総選挙で止めましょう。実施中止を求める署名を広げましょう。

(新聞「農民」2021.6.21付)
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2021年6月

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