1人も離農させない
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霜でめしべが枯死し、黒く変色した梨の花 |
近年、気候変動の影響で、年々、開花が早まっており、今年は平年より10〜14日早く開花。ナシの花は氷点下1〜2度までは耐えられますが、凍霜害が発生した日は氷点下3度まで下がり、満開を迎えていた「新高」「二十世紀」「南水」のほか、「豊水」もほぼ全滅に近い花が枯死しました。
「実がならないと、枝や葉に栄養が行ってしまい、樹体がいわゆる“木が暴れる”という状態になってしまう。生産者は夏ごろまで徒長枝の管理作業に追われることになる」と阿部さん。また実はならなくても、病害虫を防ぐ防除作業は例年通りする必要があり、その資材費が収入の減った生産者の大きな負担になってきます。
こうした被害実態に、JA県中央会や農業委員会などもいち早く県や市に要請を行い、県知事も6月議会を待たずに補正予算から、果樹の枝せん除の経費や、資材購入費などに5億5800万円の支援対策の実施することを決定しました。
「とくに、10アールあたり約100万円もする防霜ファンへの補助率が、2分の1から4分の3まで引き上げられたことは大きな力になっている。これで今後も長い営農を考えている若い生産者も展望を開くことができる」と阿部さんは話します。
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かろうじて受粉し結実した梨も霜にあたって幼果の時から傷だらけ |
また、「どちらにも入っていない多くの果樹生産者の収入が激減し、年末には資材代が払えないという人も出てくるだろう」と危惧。融資だけでなく給付金制度や、資材経費など再生産への補助のさらなる拡充の必要性を強調しました。
「このところ毎年、何らかの自然災害や異常気象による農業被害が起こっており、まさに今、地球温暖化の危機に立たされていると感じている」と語る阿部さん。そういう時でも営農を継続できるような支援策が必要だとして、「自治体による共済掛け金への補助率の引き上げや、温暖化に強い新品種や技術の開発・普及が急務になっている」と訴えました。
「サクランボは開花直前のつぼみがふくらむ時期が低温に弱く、今年はちょうどこの時期に氷点下5度が長期間にわたって続いた」と穂波さん。しかも今年はリンゴや桃など他の果樹にも凍霜害が発生。「すべてダメなんて、本当に珍しい年だ」と落胆しています。
「減収が明らかになった時点で、固定のお客さんにも断りの連絡を入れたが、収入の7割を占めるサクランボがこんなに減収してしまうのは本当にたいへん。サクランボはこの地域の基幹産業でもあり、地域経済への影響も大きいのでは」と危惧しています。
山形県のサクランボ農家の果樹共済加入率は、なんと7・7%。穂波さんは「3割も減収しないと共済金が支払われず、そんな大きな被害はめったにない一方、掛け金が高くて、加入できないのが実情。最近、収入保険に入るために青色申告にしようかと仲間と話し合っていたのだが、その矢先の凍霜害だった」と、言います。
すでに開花前の作業にかかった経費も甚大で、「国や県は、被害のあった農家への経営支援策を強化してほしい」と求めています。
県からは高橋雅史農林水産部長が対応し、要請書を手渡しした後、前日に発表された県の緊急支援パッケージの内容などについて懇談しました。
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要請書を手渡す小林茂樹会長(左から2人目)ら |
緊急パッケージでは凍霜害により50%以上の減収に対して農薬、肥料に4分の1の補助、80%以上の減収に対しては2分の1の補助などが予定されていますが、被害に比べると、あまりにも少なく、これを機に離農してしまう人が出ないようにするためにも更なる手厚い支援を求めました。
高橋農林水産部長からは農家の要望を今後も伝えてほしいとの言葉もありました。県農民連では今後会員などに更なる聞き取りを行い、要求実現のため県と交渉も行うことを予定しています。
[2021年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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