「農民」記事データベース20210524-1457-01

原発・石炭火発やめ
再・省エネに大転換を

温室効果ガス「46%削減」目標では
“気候危機”は防げない


政治を変えて、温暖化止めよう

 「異常な長雨で野菜が育たない」「高温障害で乳白米が増え、米の等級が下がった」――地球温暖化と気候変動による農業と食料への悪影響は、近年ますます深刻さを増しています。地球温暖化を食い止め、豊かな地球を未来世代に手渡せるのか、今のおとな世代の責任が問われています。

 責任に見合った目標引き上げを

 4月22日、菅義偉首相が2030年までの温室効果ガスの削減目標を、2013年度比で「46%」とすると発表しました。従来の「26%」からは前進しているように見えますが、気候危機を防ぐ水準にはほど遠い目標です。

 国連の科学者組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、温暖化の壊滅的な被害を防ぐには、世界の気温上昇を1・5度未満に抑えること、そのためには50年までに温室効果ガス排出量を世界全体で「ゼロ」にする必要があり、とりわけ30年までに「半減」させることが決定的に重要だと警告しています。

 ところが、これまでの各国の削減目標では、足し合わせても3度上昇すると予測されており、各国の、とくに温暖化に歴史的責任を負う先進国の目標引き上げが大きな課題となっていました。

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 「脱炭素」へ加速強める先進国

 これに応えるべく、世界では「脱炭素」への加速を強めています。

 4月23日にオンラインで開催されたアメリカ・バイデン大統領主催の気候サミットでも、デンマークが70%、イギリスが68%、ドイツ65%(いずれも1990年比)など、各国が続々と目標の上積みを発表。バイデン大統領も43〜45%を掲げるとともに、途上国への援助資金の大幅増額を発表し、トランプ前大統領からの政策転換を鮮明にしました。

 EU(欧州連合)は、コロナ禍からの経済復興政策に「グリーン復興」と名付け、再エネへの投資を強化するとともに、脱炭素社会に向けて法律や経済、金融などの見直し作業を進めています。

 こうした動きを見ても、菅首相の「2013年比46%(90年比では40%)」目標は、世界第5位の大排出国としての責任を果たしておらず、さらなる引き上げが必要です。

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 社会構造の抜本的な変革こそ

 さらに問題なのは、その実効性と中身です。1・5度目標を達成するには、CO2を大量に排出する石炭火力発電や原発は全廃し、再エネと省エネを抜本的に普及させる必要があります。

 しかし、菅首相は「(CO2を出さない)脱炭素電源を最大限活用」していくと強調。政府の言う脱炭素電源には事故リスクや核廃棄物問題のある原子力も含まれており、現在見直し作業が進行中の「エネルギー基本計画」の議論でも、新増設や新型炉、40年を超える老朽原発も再稼働していく方向で進められています。

 石炭火力発電も問題が山積みです。環境NGO「気候ネットワーク」の調査によると、日本全体の温室効果ガスの17%が、たった36の石炭火力発電所から排出されています。

 国連のグテーレス事務総長も気候サミットで「先進国は2030年までに石炭廃止を」と求めていますが、菅政権は「日本の石炭火力発電は効率がよいから今後も使う」と固執。現在、全国で9基もの石炭火発が新設工事中で、すべて稼働されれば、温室効果ガスはさらに3%も増加するとみられています。しかもインドネシアなど途上国への輸出まで行っており、海外からも強い批判を浴びています。

 一方、再生可能エネルギーをめぐっては、多くの環境NGOが「現在18%の再エネを44〜50%に拡大すれば、原発と石炭火発をゼロにしても、電力需要をまかなったうえで、30年までに約5割の温室効果ガス削減が可能」と試算。原発と石炭火発を優遇するために、再エネを抑制している現在の電力システムを見直すとともに、再エネ開発についても山林を伐採してメガソーラーを建設するような乱開発ではなく、地域主体の再エネ普及が容易になるような政策が求められています。

 菅政権が温暖化対策の切り札として期待を寄せるのが、CO2を地中ごく深くに埋め戻す炭素回収(CCS)といった「革新的技術」の開発です。しかしこれらの技術は、30年までには実用化が間に合いません。不確かな技術開発を、再エネや省エネなどの既存の技術でできる対策を先送りするための口実にすることは許されません。

 野党は「原発ゼロ法案」を提出

 温暖化対策の主軸であるエネルギー基本計画の改定案がまとまるのは、今年夏ごろの見通しです。野党は原発ゼロ・再エネ転換を求めて、共同で「原発ゼロ基本法案」と分散型エネルギー利用促進法案などの「再エネ4法案」を国会に提出しています。政治を変えて、これ以上の温暖化をさせない社会を実現するために、今年の総選挙は絶好のチャンスとなります。

(新聞「農民」2021.5.24付)
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2021年5月

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