「農民」記事データベース20210517-1456-01

コロナ禍
生活困窮ますます深刻に

「GW(ゴールデンウイーク)大人食堂」に
農民連が農産物を提供

手記
新聞労連元委員長
MIC(日本マスコミ情報文化労組会議)元議長
東海林智(とうかいりんさとし)さん

 5月3、5の両日、東京都千代田区の聖イグナチオ教会で、生活困窮者のための大人食堂が開かれました。この取り組みを取材した毎日新聞社会部専門記者の東海林智さんから新聞「農民」に寄稿していただきました。


農民連の皆さんの連帯に勇気もらった

 「ありがとうございます。お米助かります」

 5月5日に開かれた大人食堂。農民連の提供した2キロの米を受け取った20代と見られる若い女性は、そう言った瞬間、目に涙をためていた。そして、続けた。

 「仕事が減りご飯食べられなくて。ご飯食べるのは、仕事が入った時だけなんです。仕事のない日はごはんを食べずに寝てます」

 タマネギやアルファ米などを手に相談に向かった。大人食堂では2日間、食料を配った。受け取る人の反応はさまざまだ。「ありがとう」と大きな声で答える人もいれば、食料を手に安どの表情を浮かべる人、無言で受け取り足早に立ち去る人……。支援物資をもらうことに複雑な思いを持つ人がいるのも当然で、様々な反応がある。彼女のように、足を止めて、お礼を言い、話始める人は少ない。彼女はよほど感謝の思いを伝えたかったのだと思う。

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農民連の各産地から寄せられた農産物は参加者を激励しました(東海林記者撮影)

 農民連の提供する物資は本当に感謝されている。だけど、ふと思った。もらう方の感謝の言葉は聞いたことはあるが、送る側の思いはちゃんと聞いたことがないなと。そんな時、一緒に食料を配っていた農民連の藤原麻子事務局次長が、今回の食料提供にまつわるエピソードを聞かせてくれた。

農産物一つ一つに農家の思いが

 今回、長期間の連休に生活困窮者を支援しようという話がきたのは、開催の5日ぐらい前。急な要請だった。そんな中、農民連の仲間は準備を進めてくれて物資を送ってくれた。その中にワラビがあった。珍しいものがあると思い藤原さんに聞くと「端境期で送る物資がない仲間が、それではと山に入って収穫して送ってくれた」と言う。驚き、そして泣けてきた。そんな思いで要請に応えてくれていたのだと。

 そういえば、2008年から09年の年越し派遣村を共に担った全労連の幹部は言っていた。「農民連はすごいですよ。大変な思いをしている人だからこそ半端な物は出せない。自分(困窮者)らが大事にされていると思ってもらうためにも決して手は抜かないんです」。ワラビのエピソードに感動していると藤原さんは「ワラビだけじゃないです。送られたものには心が込められている。一人では大変だけど、仲間と共に仲間のためにと思っているからできる」と言った。

 改めて、農民連のみなさんの心からの連帯に勇気をもらいました。全国版ではないけれど、毎日新聞の都内版にもこのエピソードを紹介させてもらいました。

 農民連のみなさん、ありがとうございました。皆さんの心意気と連帯は、深く困窮する仲間や支援者に届いています。

(毎日新聞社会部記者)

(新聞「農民」2021.5.17付)
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2021年5月

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