高齢者医療費2倍化法案の問題点
いま衆議院で審議中の「高齢者医療費2倍化法案」の最大の問題は、一定所得以上の75歳以上の高齢者の窓口負担を1割から2割へ倍にすることです。
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「医療費の窓口負担2倍化は許さない」と声を上げる人たち=4月22日、国会前 |
窓口負担増大で受診の抑制も
1割負担でも、3割負担の現役世代よりも高齢者の医療費負担の割合が高くなっており、多くの高齢者にとって医療費負担が重くのしかかっています。
政府試算でも、負担増は平均3・4万円にものぼります。病気が多く、治療が長引くほど負担は増えます。
2割負担導入で受診抑制が起きることが懸念されます。政府は、75歳以上の窓口負担の2割導入で1880億円の給付費減と推計しています。窓口負担の増大が原因で受診を我慢することになれば、国民皆保険制度が空洞化することになりかねません。
政府は、現役世代の負担の軽減のためといいますが、トータルで見れば現役世代も負担は増えます。負担減は国・自治体が980億円、事業主は360億円。一方、現役世代の負担軽減は一人あたり年350円です。国と事業主の負担軽減が狙いなのは明らかです。
さらに、2割負担の対象は「所得の額が政令で定める額以上」としています。時の政権の判断で今後2割負担の範囲を広げることが可能です。
国保料値上げに国が圧力かける
もう一つの大きな問題は、都道府県国民健康保険運営方針に、都道府県内の市町村の保険料水準の平準化や法定外繰り入れ解消を求めている点です。自治体が行う一般会計から国保会計への法定外繰り入れをやめれば、国保料は値上げとなります。
国保は、健保組合・協会けんぽと比べても保険料が高すぎます。今やるべきは、国の責任で公費を投入し、協会けんぽ並みの引き下げです。
コロナ禍で、国保加入の自営業者、フリーランス、非正規雇用労働者は厳しい状況におかれています。国保料値上げへ国が圧力をかける法案など認めるわけにはいきません。
(新聞「農民」2021.5.3付)
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