「農民」記事データベース20210426-1454-07

危険なデジタル関連法案

関連/お知らせ


「個人情報の保護」が欠落

 デジタル関連法案が衆議院を通過し、参議院で審議されています。同法案の問題点は何か。

 本人の同意もなく

 この法案は、デジタル化の名のもとに、あらゆるデータを集積して、行政が持つ膨大な個人情報を企業などが「利活用」しやすい仕組みをつくろうとするものです。

 個人情報保護法制は、2015、16年の法改悪で、匿名加工などをすれば、個人情報を本人の同意なく第三者に提供できる制度になっています。

 これまでの国会審議のなかで、独立行政法人の住宅金融支援機構から民間の住信SBIネット銀行へ、年収・家族構成・職業・郵便番号など約118万人分の加工された個人情報が、住宅ローンのAI(人工知能)審査モデルの構築のために、本人の同意もなく提供されていた実態が明らかになりました。

 今回の法案は、こうした個人情報の「利活用」をさらに促進するために、民間、国の行政機関、独立行政法人をそれぞれ対象とした3つの個人情報保護法を一元化し、自治体が独自に制定する保護条例にも縛りをかけるものです。

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「デジタル関連法案は廃案に」とこぶしを上げる市民ら=4月7日、国会前

 プライバシー権は

 個人情報は個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきであり、プライバシー権は憲法が保障する基本的人権です。

 就職情報サイト「リクナビ」が就活生の閲覧記録を分析し、内定辞退率を本人の同意なく採用企業に販売していた問題のように、現在の社会では、本人の知らないところで個人情報がやりとりされ、ビッグデータやAIを利用したプロファイリング(人物像の推定)やスコアリング(点数化)によって、個人に大きな影響を与える事態を引き起こしています。今求められているのは、情報の自己コントロール権を保障する仕組みです。

 自治体の施策抑制

 デジタル関連法案では、(1)国や自治体が事務処理に使う情報システムの「共同化・集約」(2)マイナンバー制度の情報連携等の拡大(3)個人情報保護法制の一元化(4)強力な権限をもつデジタル庁の設置――という4つのツールを使って、さらにデータを集積し利活用を推進しようとしています。

 特にデジタル社会形成基本法案では、国と自治体の「情報システムの共同化・集約の推進」を掲げ、デジタル庁が整備し統括・監理する全国的なの仕組みを、全省庁だけでなく全国の自治体に使わせようとしています。

 官民癒着拡大の恐れ

 法案で設置をうたうデジタル庁は、データ利活用を強力に進めるための司令塔で、国の省庁にとどまらず、補助金を出している自治体、医療機関、教育機関といった準公共部門に対しても予算配分やシステムの運用について口を挟むことができるようになることも明らかになっています。


お知らせ

 4月24日に開催予定だった大阪都市農業研究会「特定生産緑地申請をめぐる現状と課題」(オンライン併用)は、大阪を中心に広がっているコロナ禍の状況に鑑み、中止となりましたのでお知らせします。

(新聞「農民」2021.4.26付)
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2021年4月

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