RCEP承認案の衆議院通過に抗議し、
更なるたたかいを呼びかける
2021年4月15日
農民運動全国連合会会長 長谷川敏郎
本日(4月15日)、衆議院本会議においてRCEP(アジア包括的経済連携協定)承認案が、自民党・公明党などの賛成多数で採択された。
農民連は「RCEPで野菜や果物が危ない!」と警告を発し、批准に反対してきた。しかし、私たちの「慎重審議、拙速な採決はするな!」の声を無視して、参考人質疑を含めてもたった8時間という短時間で採決された。強く抗議する。
わずかな審議の中からも、政府の説明がでたらめであることが明らかになった。
政府は「重要5品目は除外したので、農業への影響はない」と言い張り、農産物の影響試算すら示さなかったが、参考人として出席した鈴木宣弘東大教授の示した試算では、農業への影響はTPP(環太平洋連携協定)11の約半分の5600億円に及び、野菜・果物への影響はTPP11の3・5倍に達することが明らかにされた。農民連の指摘を裏付けるものとなった。
「RCEPは互恵的な条約だ」という説明も破綻した。RCEPによる各国のGDP(国内総生産)押し上げ効果は、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が軒並みマイナスになる一方で、日本は自動車産業を中心にGDPを伸ばすことが予測されている。貧困にあえぐ後発途上国と日本の農業を犠牲にして、企業利益を追求する構図は明らかである。ISDS(投資家対国家紛争解決)条項や知的財産、UPOV(植物の新品種の保護に関する国際条約)批准を加盟国に押し付け、医療や種子を大企業のもうけの道具にすることは許されない。
多くの農民・市民にも、そして国会議員にも中身を知らせないまま、RCEP協定は衆議院を通過したが、各地域でRCEP反対の宣伝を強め、地域の人々と一緒に、地元選出の国会議員への働きかけを強めて、「RCEPを批准するな」の声を国会に集中しよう。
コロナ危機を経験し、食料やワクチンをはじめとする国民に必須の物品を自国で賄うことの重要性が明らかとなった今、RCEPは批准すべきではないことを改めて表明する。参議院での不承認をめざして奮闘する決意である。
(新聞「農民」2021.4.26付)
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