「農民」記事データベース20210426-1454-01

福島原発 汚染水

海洋放出は絶対にするな

福島県農民連 佐々木健洋(事務局長)


海洋放出以外にも選択肢はある

 菅義偉総理は4月13日、関係閣僚会議を開催し、東京電力福島第一原発事故に伴う汚染水について、海洋放出を決定しました。漁業者をはじめ多くの県民の反対や慎重対応の声を無視し、決定を強行したことに断固抗議します。

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放出を決定した13日、福島県庁正面で抗議のプラカードを手に梶山経産大臣を待ち構える多くの県民。梶山大臣はなんと裏口からこっそり出入りし、県民の前に姿を見せなかった(撮影は佐々木さん)

 福島県民の反対の意思は明確

 汚染水問題に対する福島県民の意思は明確です。県議会と県内の7割を超える43市町村議会で、反対や慎重な対応を求める意見書や決議が採択されています。

 また、全漁連(全国漁業協同組合連合会)、福島県漁連の両会長は、4月7日の菅首相との面会の際、「反対の考えはいささかも変わらない」と断固反対の立場を表明しました。2015年8月に、政府、東京電力が福島県漁連と交わした「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束を反故(ほご)にしたことへも、厳しい批判の声があがっています。

 「官製風評被害」で大打撃は明白

 原発事故以降、福島県の米、桃、肉牛は全国平均価格を下回っています。福島県産米は原発事故以降、一般消費者への販売が減少し、業務用利用が6割を占めるようになりました。小売店からは「福島の米は店頭に置きづらい」と聞かされてきました。いわゆる風評被害対策に明け暮れた10年でもあります。

 さらにコロナ禍で飲食店の休業、時短営業等により、県全体での出荷遅れやさらなる価格低下にさらされています。この状況で汚染水を放出することは「官製風評被害」を起こし、福島県の一次産業、観光に大きな被害をもたらすことは明白です。

あきらめない

放出開始は2年後 運動で必ず阻止を

 陸上保管継続し英知集め解決を

 東京電力は来年秋までに汚染水保管タンクが満杯になり、廃炉に支障をきたすとしています。そして国は「避けて通れない問題」としています。本当にそうでしょうか。

 福島第一原発構内の北側には広大な用地があります。ここに大型原油タンクを設置すれば、50年近く保管することが可能で、保管中にトリチウムの半減期を待つこともできます。そしてその間に、以前は政府も言っていた、世界の英知を結集した対応をすべきです。

 東電や政府はこの提案に対して、「今後の廃炉作業で出る廃棄物を保管するために使うので無理だ」としています。しかし、廃炉中長期ロードマップでは40年で廃炉にするとしていますが、原子炉の高線量に阻まれ、何度も変更されており、すでに計画が破綻していることは明らかです。不祥事を続ける東電の言うとおりに唯々諾々と放出することは認められません。

 まだ、海洋放出以外にも選択肢はあります。

 負の遺産増やす原発は即停止に

 「決定」は強行されましたが、実際の放出は2年後とされており、まだ時間はあります。

 原子炉の高線量を考えれば、廃炉には100年を超える長い期間が必要なことを国も認めるべきです。原発は未来の子どもたちに負担を強います。であるならば、負の遺産を増やし続ける原発はすぐに停止すべきです。

 私たちは、引き続き、汚染水の海洋放出は絶対に行わない立場で、当面、陸上保管を継続し、国内外の英知を結集して解決をはかることを国に求めていきます。


相馬市松川浦のノリ・アサリ漁師

遠藤友幸さん(浜通り農民連漁民部代表)

 汚染水のタンクがいっぱいになるのは、何年も前から明らかだったのに、国も東電も10年もの間、沿岸漁師に対して何の状況説明もせず、意見聴取もしてきませんでした。

 試験操業が始まって3年がたち、少しずつノリの網の数も増やしてきて、この4月から本格操業も始まった今になって、なぜ突然、政府の独断で放出を決定してしまうのか。

 放出は国の決定にもかからず、風評被害の賠償は東電任せというのも、無責任です。どうしても海洋放出するというのなら、漁民をはじめ痛みを負わせる人に対し、国が真摯な姿勢で、万全な賠償を行うことが必要です。

(新聞「農民」2021.4.26付)
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2021年4月

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