北村富生さん(滋賀県農民連元会長)が
農水大臣賞を受賞!
鳥獣対策優良活動表彰
被害防止部門(個人の部)
獣害対策は地域づくり、人づくり
農水省が毎年実施している、鳥獣被害の防止や捕獲した鳥獣の食肉(ジビエ)の利活用などに取り組み、地域に貢献している個人や団体を表彰する「鳥獣対策優良活動表彰」。その被害防止部門の個人の部で2020年度の農林水産大臣賞を、滋賀県農民連の元会長、北村富生さん(84)=長浜市=が受賞しました。
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受賞を喜ぶ北村さん |
受賞理由として、「防護柵の設置、被害対策道具の自作、住民への普及啓発等により地域の被害を軽減させたほか、近隣の集落や市に対しても指導的役割を果たすなど、長年にわたり県内の獣害対策のリーダーとして地域に貢献」したことをあげています。
柵作り対策すれば必ず効果ある
北村さんが住む長浜市の鳥羽北上集落は市の南東部に位置し、一部は米原市にもまたがり、三方を山に囲まれています。
2006年頃からイノシシが水田に侵入し、10年にはイノシシ、シカによる農作物の被害額が250万円に。11年に市から「資材を提供するので柵を設置しては」との提案があり、自治会総会で「防護柵設置委員会」を結成し、北村さんが委員長に就任しました。
委員会は、柵設置を進めるために、集落周辺の雑木・竹林など1ヘクタールを伐採し、大規模な緩衝帯を整備。ワイヤーメッシュ(溶接した金網)の防護柵を1680メートルにわたり整備し、17年度までに倍の合計3320メートルにまで延伸しました。
集落では、ワイヤーメッシュ柵の忍び返し(折り曲げ)作業のための道具や、柵を長持ちさせるための塗装、サルを追い払うための短筒タイプの「サル鉄砲」の自作など、住民の知恵と力を合わせて追い払い対策を行ってきました。
柵をつくって対策を講じれば必ず効果があることを住民に知らせるために、害獣出没時に被害の状況を詳しく知らせ、町内放送による注意喚起を行い、住民の共通認識にしています。
住民一丸で対策 地域も活性化
北村さんは、住民が一丸となって獣害対策を進めるために、(1)集落の農地と環境を自分たちの手で守ろう、(2)集団作業で深まった仲間の絆を強めよう、(3)個々人のもっている技術・特技と英知を発揮しよう――の3つのスローガンを呼びかけています。こうして多くの住民に呼びかけた結果、緩衝帯の整備、防護柵の塗装・折り曲げ・設置作業には高齢者や女性、若者ら住民の多数が参加しました。
また、作業参加者を激励する催しやイベントを開催し、獣害対策と同時に行う花壇の花植え、桜並木の管理、県道・市道の草刈り・ゴミ拾いなどで住民同士の交流が盛んになり、地域の活性化に大きく貢献しています。
こうした取り組みで被害は大きく減り、鳥羽上北集落の被害金額は2010年度約250万円から19年度は約3万円に、被害面積は10年度約190アールから19年度には約7アールに激減しました。
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住民が一体となって防護柵の取り付け作業 |
農作物の被害 市全体でも激減
さらに、北村さんは、県の獣害対策アドバイザーや長浜市農業委員会獣害特別対策部会長を務めるなど、長年にわたって被害防止や人材育成にも貢献してきました。県内外の市町村からの視察・研修を受け入れ、作業指導や講師として出張もしてきました。
鳥羽上北の集落あげての防護柵設置は、市の援助とも相まって市内に広がり、20年には柵の延長が、186キロメートル(整備完了率89・4%)となりました。その結果、11年に1億1600万円だった市の農作物の被害額は、19年には813万円に激減しました。
受賞を喜ぶ北村さんは言います。
「農林水産大臣賞受賞は私個人になっていますが、集落のみなさんの英知を集めた取り組みが評価されたもので、その根底には町ぐるみの活動があります。さらに、今回の受賞は獣害対策に取り組んだ集落と行政のみなさんへの大きな激励です」
(新聞「農民」2021.4.19付)
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