北海道農民連
菅首相、規制改革推進会議に抗議
ホクレン分割案
一元集荷・多元販売、指定団体制度を守れ
牛乳は、飲用乳、バターやチーズなどで私たちの食生活を支えています。生乳換算で年1200万トン(米が800万トン)以上消費され、また4割が加工製品として輸入されています。
過去に、牛乳は廃棄を繰り返してきました。季節によって生産量、消費量が大きく変わる牛乳の廃棄を防ぐため、ホクレン農業協同組合連合会など指定団体が牛乳を集めて、飲用乳の工場、バターやチーズなど加工品の工場に振り分ける一元集荷・多元販売が行われてきました。昨年のいっせい休校による給食牛乳休止でも、廃棄することはありませんでした。
安倍前政権は「販売先を自由に選べる」と、一元集荷・多元販売の仕組みを変えようとしましたが、ほとんどの酪農家は、過去の牛乳廃棄の経験からホクレンに牛乳を出荷し続けました。
「ホクレンより高い価格」をうりに北海道の牛乳生産者団体から牛乳を買っていた牛乳卸MMJ(本社・群馬県伊勢崎市)が2019年11月に「異物混入」を理由に生乳の受け入れを止めたため牛乳が廃棄されました。
MMJに受け入れ拒否された生産者はホクレンに戻り、牛乳を出荷していた牛乳生産者団体は、現在MMJを訴えています。牛乳の特性を顧みない規制緩和が、危ういものであることを示した事例と言えます。
北海道は全国の54%の牛乳を生産し、釧路港から「ホクレン丸」2隻で毎日本州に牛乳を運んでいますが、道内生産の70%はバターやチーズなどに加工されています。
3月19日に行われた、政府の規制改革推進会議農林水産ワーキンググループの会合で「農協以外の生乳流通が増えていない」「ホクレンなどが独占的な立場にあるから分割したらいい」「年の途中で生乳の出荷先を代えたり、いいとこ取りはビジネスの常識」など、より一層の競争を進める議論が行われていることが報道されました。
道内の酪農家と議論し記者会見
22日に道農民連は、全国農民連の吉川利明事務局長も交えてオンラインで、全道の酪農家とこの問題を論議しました。「牛乳の日持ちしない特性を顧みない規制緩和は、酪農家、国民のためにならない」「酪農家の運動、要望で築かれた一元集荷・多元販売の優れた仕組みを守るべき」「ホクレンなど農協のあり方に意見はあるが、規制改革推進会議の議論は農協解体、協同組合敵視につながる危険な動き」などの意見が続出し、26日に内閣総理大臣、規制改革推進会議議長、農林水産ワーキンググループ座長に抗議文を送付しました。
また、30日に記者会見を行い、道農民連の考えを公表しました。会見の内容は、地元紙に報道されました。
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記者会見する富沢書記長(左)と岸本辰彦副委員長 |
4月9日には、農水相に「家族農業支援を基本に、小規模酪農を重視すること」「一元集荷・多元販売、指定生乳団体制度を堅持」「バター、脱脂粉乳の輸入削減」などを、全道の酪農家がオンラインで要請しました。
(北海道農民連書記長 富沢修一)
(新聞「農民」2021.4.12付)
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