「農民」記事データベース20210329-1450-08

東日本大震災 福島原発事故

あの日から10年

岩手県漁民組合
相談役 佐藤照彦さん
=山田町=


県漁民組合を結成して10年
漁民の要求を取り上げて…

 漁民組合は2011年大震災後の10月23日、漁民要求を実現するため、山田漁民組合として結成され、当初は20人でした。農民連、農民組合との交流会、「漁業復興と漁民組合を語るつどい」、日本共産党の紙智子参院議員に来てもらい、「漁民との意見交換のつどい」を開くなど活動してきました。

 東北農団連の東北農政局交渉にも参加。農民連のみなさんの勉強ぶりと迫力ある交渉に漁民のみなさんは大いに刺激を受け、がんばらねばと思ったようです。

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全国沿岸漁民連と岩手県漁民組合が開いた「食と漁の地域未来フォーラム」=2020年1月19日、陸前高田市

 この運動を山田の漁民だけの運動から岩手県沿岸全域の運動に発展させるため、山田漁民組合を解散し、12年1月22日、岩手県漁民組合を結成しました。組合は、三陸沿岸漁業を守るため、大型底びき網漁、大型まき網漁の漁業規制を求めるなど、対政府交渉・対県交渉を重ねました。しかし、政府からも県からも漁民が納得できるような回答はありませんでした。

固定式刺し網でサケをとらせよと
「浜の一揆訴訟」

 漁業者第一の漁業行政求めて

 交渉だけではらちがあかないので、澤藤統一郎弁護士と相談し、小型漁船漁業者の長年の願いである「固定式刺し網でサケをとらせよ」と県知事に102人が集団申請しました。しかし、県は不許可の決定を下しました。

 漁民側は水産庁に審査請求、さらに所定の期日が過ぎた後、盛岡地裁に「不許可の取り消し」と「許可の義務」を求めて、県知事を相手に行政訴訟を起こしました。「浜の一揆訴訟」です。地裁では10回の口頭弁論のうえ敗訴、ただちに仙台高裁に控訴。7回に及ぶ口頭弁論を行いましたが、20年2月15日に敗訴。原告団は弁護士と相談、上告しました。しかし、最高裁は20年9月1日、上告棄却を決定し、敗訴が確定しました。非常に残念です。

 訴訟には負けましたが、漁業行政の不合理をただし、漁業者第一の漁業行政でなければならないことを訴えてきたことは大いに良かったと思っています。

 この訴訟にあたり、農民連のみなさんはじめ、多くの方々のご支援をいただき、ありがとうございました。漁民あっての漁業であり、三陸沿岸の漁業を守り、沿岸漁民と漁村を守るためにがんばる決意です。

沿岸漁民・海に働く労働者が
漁業の主人公となるために

 復興と漁業を探るフォーラム

 特筆すべき活動の一つは、14年10月18日、山田町で「復興と漁業の展望を探る」フォーラムを開いたことです。県内各地をはじめ、13都県から漁業関係者ら80人余が参加しました。協賛は「21世紀の水産を考える会」「農民連」等です。フォーラムの最後に「私たち沿岸漁民・海にはたらく労働者が日本の漁業の主人公となるために互いに協力、援助しあう全国組織の結成を心からよびかけます」とするアピールを発表しました。

 ゆるやかな要求 たたかう組織に

 山田町でのフォーラムの呼びかけに応え、15年には北海道、岩手、千葉などの参加で漁民連の準備会がもたれ、ゆるやかな要求でたたかう組織としてスタートしました。その後、JCFU全国沿岸漁民連絡協議会(漁民連)として組織を確かなものにし、マグロ、カツオ、イカ問題などのたたかいのなかで構成メンバーを増やし、現在1万2千人の会員を擁する組織になっています。

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大船渡市三陸町越喜来の防潮堤

 海区漁業調整委 選挙で2人当選

 12年7月の岩手海区漁業調整委員会選挙に藏徳平組合長が立候補し、無投票で当選。16年8月の選挙では、現職の藏組合長と菅野修一監事の2人の候補者でたたかいました。公選委員9人には11人が立候補し、2人はみだしです。県北、県南と地盤割りし、藏さんは足で歩いて実績を語り、菅野さんは選挙カーを仕立て「若者と現役が希望のもてる漁業を」と訴え、見事2人とも当選しました。

 新漁業法の制定により、海区漁業調整委員は公選から知事の任命制に改悪されました。今年3月の任命にあたり、漁民組合側から現職2人を含む4人の推薦を知事に届け出ました。県側から県議会運営委員会に提案された名簿には、委員会で発言が多かった菅野さんは外されて藏さん一人だけが残り、ほかは全員漁協組合長という非民主的なものでした。

 漁業法を大改悪する新漁業法の制度に反対するたたかいとして、18年11月に盛岡で新漁業法改悪の内容を詳しく学習するフォーラムを開催しました。青森・宮城からも含めて180余人の参加がありました。また、20年1月には陸前高田市で沿岸漁業を守るために新漁業法にどう対応するかというフォーラムを開催し、120人が参加しました。

 コロナ禍で価格低下に追い打ち

 魚の激減とコロナ禍にどう対応するのかが、いま大きな課題です。岩手の主要な魚種である秋サケ、イカ、サンマが激減し、漁業離れが起きています。また、コロナ禍による価格の低下が追い討ちをかけています。サバ、イワシは増え、これまでとれなかったタイ、タチウオなどがとれるようになっています。こうした変化に応じた漁獲と加工を工夫し、三陸沿岸漁業と水産加工業を振興させることが重要です。

(新聞「農民」2021.3.29付)
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2021年3月

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