「農民」記事データベース20210301-1446-09

旬の味


 庭の大きな紅葉の木の下に、今年も福寿草がたくさん芽を出し、暖かい日の光に黄色い花を一面に咲かせ始めた。いつもこの花が咲き始めると、やっと厳しい寒さから解放されるのだと思う▼日本を代表する哲学者の一人、三木清のエッセー「人生論ノート」の中で「機嫌のよいこと、丁寧なこと、親切なこと、寛大なこと等々……鳥の歌うが如くおのずから外に現われて、他の人を幸福にするものが真の幸福である」と▼このコロナ禍のなかで家族の生活を改めて見つめ直すことができた。息子の仕事は息子の仕事と割り切っていた生活から自粛を余儀なくされ、それならばと仕事を手伝うようになり、早いもので1年▼長男夫婦との距離もぐっと縮まったように思う今、作業場での会話は、夫中心で政治のこと、経済のこと、地域社会のこと、子育てのこと、老後のことなど▼いつもたいへんにぎやかなこと。どのような状況のなかでも現実大肯定。三木清の「鳥の歌うが如く」を胸に一日も早いコロナの終息を願うものだ。

(志)

(新聞「農民」2021.3.1付)
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2021年3月

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