大雪被害 岩手でも
(機関紙「いわて食・農ネット」から)
農業用ハウスに大打撃
野菜出荷、育苗、農業機械に被害
「育苗に間に合わない」「この際離農するか…」
昨年から今年の冬は、岩手県でも大雪と低温に見舞われています。とくに県南部では奥羽山脈沿いを中心に、かつてない降雪量となっています。
ハウスが倒壊
補償はどうなる
12月15日から17日にかけて積もった雪により、いたるところでビニールハウスが倒壊。しかし農業共済制度に加入していないケースも多く、こういった場合には最終的には個人負担となってしまいます。
今後、国や自治体などで何らかの救済策が具体化される可能性もあり、「その際に証明となるよう、せめて被害状況の写真をとっておこう」と、よびかけあっています。
奥州市では、「とくに育苗ハウスをやられたところが多いようだ」との声も聞かれます。また、ハウスの中に農業機械を入れていて、「ハウスそのものよりも、つぶされた機械の被害の方がたいへん」と言う農家も。このままでは今年の田んぼの作付けも心配される事態です。
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骨組みごとつぶれたハウスがあちこちに |
放射能・獣害…
雪が追い討ち
ビニールハウスを倒された一関市萩荘のSさん。「長い間降り続いたせいでつぶれたというよりは、1日目でもうすっかりやられた」と言います。
この地域は、もともとは山菜や原木シイタケの名産地。しかし東京電力福島第一原発の事故による放射能汚染で、多くの農家が原木シイタケ栽培から撤退しました。また、シカに加えてイノシシも増え、人間が電気柵に囲まれて暮らす状況になっています。
こちらのお宅では、ハウスはタラの芽栽培にも使っていました。山から切っておいたタラの芽の枝をハウスに寝かせることで早く芽吹かせ、春先にいち早く出荷する…というものです。そのタラの芽も放射能被害により出荷できなくなり、その後は直売所で販売する野菜栽培などにハウスを使っていました。
原発事故後はシイタケも山菜も出荷できず、直売所への野菜出荷を中心としてきたSさん。しかしハウスがつぶされたのを受け、「この際、もうすっかり農業やめるかなあ」とも語っています。
降雪と低温続き
被害は至る所に
奥州市から一関市にかけては、ソーラーパネルの損傷も深刻で、屋根に載せた家庭用でも、野立てのメガソーラーでも、枠からパネルが落ちる被害が頻発しています。
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雪の重みで損壊した太陽光発電 |
さらに1月8日には県南を中心として降雪に加えて強風も吹き、花巻市などでは停電が発生しました。12月中旬以降、低温も続いています。1月9日には宮古市区界で過去最低気温となるマイナス19・3度まで下がり、畜舎の水道凍結などの被害も出ています。低温がひどいと、果樹の枝や芽が傷んだり、家畜が体調をくずすなどの被害も懸念されます。
被害はさまざまですが、忘れてはならいのは「災害」であること。個々の農家・市民の負担にせず、生活と生産を復旧できるようにすることが求められています。
(新聞「農民」2021.3.1付)
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