乳製品は輸入大幅削減一方で 外国産米の輸入は聖域のまま
農水省は1月31日、2021年度の乳製品輸入枠をさらに大幅に削減することを決めました。バターは19年度2万トンから20年度1万4000トン、21年度6400トン(68%減)、脱脂粉乳は2年連続で82%減となります(図)。コロナ禍による外食需要の減退などで積み上がっている在庫対策のためです。
米価下落対策に背を向ける菅政権乳製品も米も需要減少は同じ昨年の学校給食停止などによって余った牛乳は、国の助成を受けてバターと脱脂粉乳に加工され、備蓄されてきました。バターの生産は昨年比13%増となった一方、業務用需要の減退で消費量は10%減。このため在庫は昨年12月末で3万5000トンと前年同月比49%増、ほぼ過去最高水準になっています。脱脂粉乳の在庫も8万2000トンで前年同月比19%増。
バターについては、第3次補正予算で輸入バターを国産に置き換える乳業者を支援し、最大で7000トン程度の消化が見込まれており、予算額17億円で価格差を穴埋めします。 そのうえで、乳製品の輸入枠を大幅に削減してコロナ対策に万全を期するというわけですが、これとは全く対照的なのが米価暴落対策です。 コロナ禍によって在庫が積み上がっている事情は米も乳製品も共通です。政府の米需給見通しによると、21年6月末在庫は6%増、プラス10万トン。これはコロナ禍による需要減少とほぼ同じです。 政府は、これに21年の米消費減を織り込んで、6・8万ヘクタール、36万トンの減反拡大を強要し、昨年12月21日には「これが実現できなければ、需給と価格の安定が崩れ、危機的な状況に陥りかねません」という農水大臣談話まで発表して、農民と農協を脅迫しています。しかし、これは二重に不当です。
輸入枠を削減し備蓄対策をとれ第1に、「危機的な状況」というのであれば、せめて乳製品なみに米の輸入枠を削減すべきです。最も「過剰」で不要なのは外米(ミニマムアクセス米=MA米)です。農水省は12月25日、農民連の要請に対し「MA米は国内生産に一切影響はないとは言えない」と初めて言及したものの、輸入枠削減を拒否しました。MA米77万トンは過去最大規模の減反拡大分36万トンの2倍、主食用に輸入される米(SBS米)10万トンは在庫増分に当たります。要らない外米には手をつけず、もっぱら国内の減反にツケを回す“外米ファースト”政治の転換が今こそ求められています。 第2に、牛乳生産はわずかですが、3年連続で伸び続けています。余った生乳の加工用仕向けに対する助成や輸入バターを国産に置き換えるための支援は、一種の備蓄対策です。これがなければ、コロナ禍は乗り切れなかったといってよいでしょう。乳製品でやっていることを、なぜ米価暴落対策ではやらないのか! いま求められているのは「このままでは米作りは続けられなくなる」という切迫した声にこたえて、米危機を打開することです。しかし、菅政権がやっていることは、これに全く逆行する米つぶし政治です。
深刻化する米価下落
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米価下落対策を迫る参加者 |
冒頭、笹渡義夫副会長が「このままでは米価暴落の最悪のサイクルに入ることが懸念される。コロナ禍での非常事態だ。従来の枠を超えた対策を強く要求する」と要請しました。
参加者から「20年産米の全農などの未契約数量が50万トンを超え、秋には大量の繰越在庫が市場にあふれ、21年産米の36万トン減産の効果も消滅しかねない」「必要のないMA米の輸入も停止するなどの国産米優先の特別対策が必要だ」と訴えました。
しかし農水省は、過剰在庫の備蓄米としての追加買い入れやMA米の輸入数量抑制を一貫して拒否する回答に終始。その根底には、菅首相の「追加買い入れも輸入削減もしない」(11月22日、参院本会議)という冷酷な答弁があります。
笹渡副会長は「稲作は崩壊の危機にある。政府の出番だ。より踏み込んだ対応を」と訴え、農水省は「私たちも同じ思い。寄せられた声を確実にあげ、議論したい」と答えました。
日本共産党の紙智子参院議員が同席しました。
[2021年3月]
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