オンラインシンポジウム
国連『家族農業の10年』と
持続可能な森林・林業
小規模な自伐型林業こそ
地域づくり、環境保全に貢献
家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)と自伐型林業推進協会は1月24日、持続可能な森、林業、地域のあり方について考えるオンラインシンポジウム「国連『家族農業の10年』と持続可能な森林・林業」を開催し、約70人が視聴しました。
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和歌山・古座川地域では農業、林業などが連携して地域づくりを進めています(宇田組合長の報告パワーポイントから) |
FFPJの村上真平代表が開会あいさつ。「持続可能な社会をつくるうえで農林水産業のような第1次産業が果たす役割は大きい」と述べ、なかでも林業が気候変動や地球環境に与える影響にいま大きく注目が集まっていると強調しました。
アジア太平洋資料センター(PARC)作製のドキュメンタリー映画「壊れゆく森から、持続する森へ」を上映。上映に先立ち、FFPJ副代表の上垣喜寛さん(自伐型林業推進協会事務局長)が映画の紹介を行い、戦後、政府は林業の大規模化を進め、50万人だった林業従事者は5万人へと10分の1に激減したことを指摘。地域づくりに林業も大きく貢献している現状を報告し、「いまこそ小規模な自伐型林業が求められている。自分たちの住む地域をどうするのかという問題意識をもって映画を見て、議論してほしい」と語りました。
林業も大規模化で保全機態悪化
上映後、トークイベントを行い、5氏がパネリストを務めました。
経済学者の金子勝さん(立教大学特任教授)は、農業が大規模化・効率化を進めてきたのと同様、林業も大規模化と短期で利益を出す効率化が求められてきたことを紹介。一方で、林業と農業との兼業など多角経営も進み、地域づくりや環境保全と密接に関わっている現状を報告しました。
九州大学大学院の佐藤宣子教授も、政府が一貫して林業の大規模化を進めた結果、モノカルチャー(単一栽培)化、皆伐が進み、土砂崩落の危険、生物多様性の喪失が深刻になっている現状を批判しました。
FFPJ常務理事の関根佳恵さん(愛知学院大学准教授)は、国連「家族農業の10年」の取り組みのなかで、林業もSDGs(持続可能な開発目標)達成のカギと位置づけられ、小規模林業の役割の重要性と政策的支援の必要性をうたっていることを紹介。今年から始まった国連「生態系回復の10年」と連動して、陸地の3割を占め、生物種の8割が生存する森林保全の意義と必要性を述べました。
国の「基本計画」に反映させよう
和歌山・紀ノ川農協組合長の宇田篤弘さんは、古座川町で昨年に結成された古座川流域プラットフォームの取り組みを紹介し、「地域で働き、暮らし、生きる」ことをめざし、住民への聞き取り調査などを実施しながら農業、林業、観光業、漁業が連携して移住・定住の促進、防災の地域づくりを進めている実践を報告しました。
静岡県浜松市でパーマカルチャー(永続可能な農業や文化)を通じて持続可能な環境・地域づくりを実践する天野圭介さん(農園ONE―TREE代表)は、永住可能な地域づくりとして、食・水・エネルギーの自給、森林生態系の回復などをあげ、その地域にあったやり方で地域づくりを進める必要性を語りました。
最後に、FFPJ常務理事の池上甲一・近畿大学名誉教授が閉会あいさつを行いました。
概ね5年ごとに見直される「森林・林業基本計画」が5月に閣議決定される予定であることを踏まえ、「FFPJとしての国内行動計画を策定し、私たちの提案が『基本計画』に反映されるよう、引き続き働きかけていこう」と呼びかけました。
(新聞「農民」2021.2.22付)
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