第24回定期大会
笹渡義夫会長あいさつ
(大要)
代議員、評議員のみなさん、明けましておめでとうございます。初めてのウェブを利用した大会に、障害を乗り越えて参加していただいた代議員・評議員の皆さんに心から感謝申し上げます。
新自由主義ではコロナ後の展望開けない
新型コロナウイルスの感染拡大は、国民に命と健康への不安を与え、需要の減少が農産物価格を暴落させ、農業と農山村の地域経済に計り知れない打撃をもたらしています。しかし菅政権は感染防止でも、経営・価格対策でも、まともな対策を打ち出せず、政権担当能力が根本から問われる状況となっています。
農民連は、全国各地でコロナ禍に向き合い、農民の切実な要求を実現する運動を展開してきました。この運動と結んで新たに1900人近くの会員と、2100人を超える「農民」読者を拡大し、前大会現勢を会員・機関紙とも上回って今大会を迎えることができました。まさしく大躍進です。新たに加入された全ての会員の皆さんを心から歓迎し、全国で奮闘された全ての仲間の皆さんに敬意を表し、成果を共に喜び合いたいと思います。
コロナ禍は、日本の政治と社会の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにしました。政治の役割を投げ捨てて、国民に自己責任を押し付ける政治、市場原理を物差しにした弱肉強食の経済政策、食料を外国に依存し、家族農業を切り捨てる農政、こうした新自由主義的政策ではコロナ禍を乗り越えることはできないし、コロナ以後の社会も展望できません。そのことは、農業ではさらに明瞭です。
世界同時多発の新型コロナ感染拡大で、農産物の輸出を停止・規制する国が20カ国以上に及びました。食料の6割以上を輸入に依存する日本の現実に、国民が「これでいいのか」と不安を募らせることになりました。
外米輸入はそのまま農民に減反押しつけ
コロナ禍で暴落した米価問題では、せめてコロナ禍で失われた需要減少分を政府が買い入れて暴落を止めてほしいというのは、農民や米業界の当然の要求ですが、政府は背を向け続けています。そして打ち出したのが2021年産米の36万トンもの大幅削減方針です。
不要な外米の輸入には指一本触れず、史上最大の「価格保障なき減反」を農民に押し付けようとしています。まさに政府の役割を放棄した農民への「自助」の押しつけです。
こんなことを続けていたら、際限なく米の生産量が減り続け、米を基幹とした日本農業の持続可能性が根底から崩壊させられかねません。
声を大にして言いたい。新型コロナの根本的対策には一極集中の是正が不可欠であり、その柱は農村に住み、農業で生活できる政策を確立することです。米価下落対策はその柱です。
世界では持続可能な社会にむけた努力が開始され、その中核として国連「家族農業の10年」の取り組みが前進しています。こうした方向に政治も農政も転換することが、いよいよ普遍的な意義をもってきました。
総選挙で野党連合政権を実現させよう
今年は総選挙がたたかわれます。この間の市民と野党の蓄積を生かし、菅自公政権を打倒して野党連合政権を樹立することを現実的な政治目標に掲げた歴史的選挙になります。
それは、農民連行動綱領がめざす、「アメリカの食糧戦略と大企業の利益のために農業を切り捨てる政治に反対し、家族労働を基本とし、今日の進歩した科学や技術を生かした農民経営の安定を基礎に、日本農業の自主的発展をはかる」という目標に、大きく接近するたたかいです。
総選挙で政権担当能力をなくしながら新自由主義に固執して国民に塗炭(とたん)の苦しみを押し付ける菅自公政権を退場させ、農民の要求を実現し、農業を再生させる野党連合政権を実現するために全力を挙げようではありませんか。
地域から支える力持った農民連づくりへ
最後に組織について触れます。農家戸数は農民連結成の翌年の1990年の317万戸から2020年は107万戸へと3分の1に減少させられました。
農民連も2002年をピークに拡大を上回る減少が続いてきましたが、今回、減少に歯止めをかけて前大会を上回る会員数で大会を迎えたことは画期的です。
新たに加入された皆さんは、これまで農民連が届かなかった広範なつながりを持っています。今回の前進は、今後の農民連の組織づくりの可能性をさらに広げるものになると確信します。
家族農業を守る農政への転換、家族農業を支える要求運動、物を作ってこそ農民連の原点に立った安全・安心の生産運動、要求を実現する力を強め、市民と野党の共闘と、野党連合政権をめざし、地域から支える力を持った農民連づくりへの挑戦を開始しようではありませんか。そのことを強く呼びかけてあいさつとします。
(新聞「農民」2021.2.1付)
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