「農民」記事データベース20210118-1440-06

新春インタビュー(下)

法政大学教授・山口二郎さんに聞く

関連/オンラインシンポジウム 「国連『家族農業の10年』と 持続可能な森林・林業」


2021年は総選挙の年

市民と野党の共闘で新しい政治をつくろう

 野党の立ち位置 市民側から示す

――「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は9月19日、「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書―いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を―」を発表しました。どのような内容ですか?

 山口 衆議院の任期が1年を切り、解散・総選挙がいつあってもおかしくないなかで、野党の再結集を進めるために、野党が共有すべき政策の柱をまとめたものです。これを具体的政策にするために、課題は何段階もありますが、野党の立ち位置を市民の側から示すために作成しました。

 「要望書」の特徴は、安保法制の廃止、憲法擁護という大きなテーマはこれまで通り大前提にあるのですが、今回は、コロナ危機という人類史的課題に政治がどう対応しなければならないのかを示したところが新しくなった点です。

 また、新自由主義のもと、格差・貧困が深刻化するなかで、政府がお金を使って、人々の命を守り、くらしを支えなければならない。「自助」が先にくる菅政権に対して、「公助」を最初に打ち出す野党連合の必要性を訴えていかなければならないと思います。

市民連合の野党への要望書
新自由主義を見直し農林水産業の振興を

 持続可能な農林漁業支援の政策

――今回の「要望書」のなかに、「持続可能な農林水産業の支援」が盛り込まれましたね。

 山口 経済学者の宇沢弘文氏の著書『社会的共通資本』からインスピレーションを得て、この理念が今回の政策文書の土台になりました。お金もうけのための農業でなく、環境保全や食料の供給など、社会的・公共的機能をもっている1次産業、農林水産業を今後も支えていくという私たちのメッセージです。

 直近2回の参議院選挙の定数1の1人区では、16年に11選挙区、19年に10選挙区で野党候補が勝利しました。沖縄と大分以外は、東北や新潟、長野などいずれも農村部です。農民運動の伝統を感じますね。農政をはじめ世の中の動きに敏感な人々がいるところで野党が健闘している意味は大きいと思います。

 安倍前政権のもとで、稼ぐ農業や輸出を前面に、高価な農産物などもうかること、派手なことが推し進められてきましたが、農業政策は、国民の食料供給をどうするのかが第一の仕事です。米を中心とした基幹作物で国民を飢えさせないことが求められています。今の自民党政府は、種苗法や漁業法の改定で人類の共有財産である農林水産業を壊しています。

 今回の「要望書」に盛り込みましたが、戸別所得補償の復活で、家族経営の農業を守り、若い人も希望をもって農業ができるようにバックアップすることが必要です。そして輸入農産物などに頼らず、住んでいる地域で食料が手に入る仕組みをつくるためにも、食料自給率の引き上げを政策の目標にすえたのです。

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「学術会議への人事介入を許すな」「改憲発議は阻止」とアピールする市民=2020年11月3日、国会前

 農業分野から新しい政治の波

――最後に、農業分野での市民と野党の共闘への期待をお願いします。

 山口 コロナ危機の教訓は、人間も自然の一部であることを忘れてはいけないということです。国民の命と健康に直結する農林水産業の大切さを多くの国民が実感しているのではないでしょうか。

 農林水産業は、新自由主義の弊害、矛盾が顕著に表れる分野です。そこで、市民・農民と野党が共闘する意義は大きいと思います。農業分野から、自分たちの政治をつくる力と新しい波を起こしてほしい。

 日本の政党政治の歴史のなかで、市民と野党の新しい共闘が生まれているのは画期的なことです。自民党政治に変わる新しい政治をご一緒につくりましょう。

(おわり)


オンラインシンポジウム
「国連『家族農業の10年』と 持続可能な森林・林業」
 ▼日時 1月24日(日)午後1時〜3時半
 ▼開催方法 Zoomによるオンラインセミナー
 ▼共催 家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)、自伐型林業推進協会
 ▼参加費 1000円(農民連会員は800円)
 ▼内容
・ドキュメンタリー映画「崩れゆく森から、持続する森へ」
・トークイベント
 佐藤宣子(九州大学大学院教授)、金子勝(立教大学特任教授)、天野圭介(農園ONE−TREE代表)、関根佳恵(愛知学院大学准教授・FFPJ常務理事)、宇田篤弘(紀ノ川農協組合長・FFPJ常務理事)
 ▼お申し込み 右記URLから https://www.ffpj.org
 ▼お問い合わせ FFPJ事務局(農民連本部・担当者岡崎) 電話 03(5966)2224、Eメール:info@ffpj.org

(新聞「農民」2021.1.18付)
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2021年1月

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