新春インタビュー(上)
法政大学教授・山口二郎さんに聞く
2021年は総選挙の年
市民と野党の共闘で新しい政治をつくろう
2021年は総選挙の年です。コロナ危機を乗り越え、憲法・平和を守るために、市民と野党の共闘で、自民党政権に変わる野党連合政権を誕生させる絶好のチャンスです。法政大学の山口二郎教授に、20年を振り返り、21年の展望を語っていただきました。
新自由主義終焉(えん)
政治変える展望
――2020年の大きな政治的出来事は、安倍政権が退陣し、菅政権が発足したことでした。20年を振り返って、どんな年でしたか?
山口 安倍政権の退陣は、「桜を見る会」疑惑への追及から逃げるためであり、国民に納得できる説明がなく、安倍氏は最後まで責任をとらない卑怯な権力者でした。
一方、私たちにとって20年は、次の総選挙に向けた準備の時期となり、新しい立憲民主党が結成されたことは大きな出来事でした。これには3つの大きな意味があります。1つは、保守2大政党に終止符を打ち、リベラルな路線で自民党と対決することが可能になったことです。2つめは、新自由主義を終わらせ、政府がお金を使って人々の命と生活を支える政治への展望が開けたこと。3つめは、選挙戦略上の問題ですが、共産党を含む野党の協力で次の選挙をたたかう路線と態勢がはっきりしたことです。
20年は、年明け早々から、通常国会で野党が「桜を見る会」で安倍政権を追及しました。途中、新型コロナ危機への対応で、たたかいは一段落しましたが、通常国会と秋の臨時国会を通じて、コロナ対策でも、野党は建設的な提案を行い、政府・与党もそれを受け入れて、定額給付金など実現したものもあります。野党はよくがんばったと思います。
憲法を壊す政治推進する菅首相
――菅政権をどうみますか?
山口 菅氏は、安倍前首相と違って、憲法「改正」をあまり前面に出しませんが、日本学術会議への人事介入問題のように憲法を壊す政治を進めています。憲法や法律を守るのではなく、安倍氏以上に憲法の上に君臨する自分を誇示したがる権力者です。虚無主義的なところと、権力への執着が結びついている新しいタイプの政治家だと思います。
それに加えて、最近のコロナ対策によく表れていますが、人の言うことをあまり聞かず、間違った政策をいつまでも続けたように、自分が決めたことへの執着はあまりに強い。自分の間違いを認めないのは、菅氏の最大の欠陥です。支持率が下がるのは当然です。
市民参加で選挙たたかう隊列を
――2021年は総選挙の年です。どのように展望しますか?
山口 総選挙では、政権交代をめざし、野党が協力して、市民がそれに加わり政治を転換したいと思います。状況は、旧民主党が政権をとった2008年、09年に似ていると思います。当時はリーマン・ショックがあり、今回はコロナ危機。自民党も人材不足で統治能力が低下しているところも前回と重なっています。
野党の側は、立憲民主党を軸にたたかう態勢が一応できました。しかし、前回、民主党政権が挫折して以降、国民の野党への期待感が薄いことが問題です。私たちはそれを補う努力をしなければなりません。
それには、野党の協力に加えて、市民の参加で選挙をたたかう隊列をしっかりつくっていくことが大事だと思います。
(つづく)
プロフィル
山口二郎(やまぐち・じろう)
1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。立憲デモクラシーの会共同代表、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合世話人。
主な著書に『政権交代とは何だったのか』、『若者のための政治マニュアル』、『民主主義は終わるのか』、『長期政権のあと』など。
(新聞「農民」2021.1.4付)
|