コロナ対策「高収益作物次期作支援」
農水省が突如、運用を見直し
現場は大混乱
制度趣旨の変更、許容できない
農民連が緊急要請
新型コロナウイルス対策の一つ、「高収益作物次期作支援交付金」は、新型コロナ禍で大きな打撃を受けた農産物(政府と県が指定)に対し、次期作に意欲的に取り組む生産者を支援し、農業生産の維持を図るもので、減収の補てんを目的とした政策ではありません。対象品目も農水省が市場価格を見て指定しており、生産者に減収の証明は求めてきませんでした。
しかし、10月12日の生産局長通知で突然、農水省が運用の見直しを行い、現場は今、大混乱が起きています。見直しのポイントは、(1)申請時にコロナ禍の影響による減収の証明を要求、(2)交付金額は減収額を上限とする、の2点です。
農水省は「減収がないのに交付金をもらっている。減収を超える交付金でもうけているなどの批判がある」などと農家を悪者扱いしていますが、趣旨を説明し、正当性を伝えるのが農水省の責任です。今回の見直しは、制度の趣旨を根底から変えてしまうもので、許容できるものではありません。
農民連でも和歌山県の紀ノ川農協などが窓口となって進めていますが、現場では、申請書類の変更や追加資料の準備など、対応作業の増加や申請者への説明に苦慮しています。北海道のある農協では組合長が組合員への文書で「はしごを外されたような強い憤りと失望感を感じている」と記すなど、失望が広がっています。
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要請書を手渡す吉川利明事務局長(左) |
また「規模を拡大して準備を進めている」「すでに設備投資をしてしまった」という生産者もあり、減額となれば大きな負担になります。
「農水省が生産者をだました」と言われかねない事態です。
農民連は見直し撤回を求め10月23日、農水省に対し緊急の要請を行いました。オンラインで各地から実情を訴えたのに対し、農水省は謝罪の上で同様の説明を繰り返しましたが、すでに設備投資をした農家に対しては、「何ができるのか検討中」と回答しました。
農民連は予備費を活用して予算を確保し、今回の運用見直しを撤回するよう求めました。
(新聞「農民」2020.11.2付)
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