「農民」記事データベース20201102-1431-02

映画「タネは誰のもの」
原村政樹監督に聞く

種苗法改定問題考える素材に


各地で上映・学習を

画像  映画「武蔵野」「お百姓さんになりたい」を作製した原村政樹監督が、ドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」(企画・一般社団法人心土不二、プロデューサー・山田正彦元農林水産大臣、65分)を制作し、各地で上映会が開かれています。原村監督に映画作製の思いと見どころなどを聞きました。

◇ ◇ ◇

 日本の農業と食料が巨大グローバル企業に脅かされる動きが急速に進んでいるのではないか、その実態を明らかにしようと撮影を始めました。

 この間、モンサントの除草剤、ランドアップの主成分・グリホサートの大幅規制緩和、主要農作物種子法(種子法)廃止とその背景にある農業競争力強化支援法成立と、安倍前政権は企業(外資)による食の支配に道を開いてきました。

 そうした流れの中で、今年2月ごろから種苗法改定の話が出てきました。私がこの映画をつくろうと考えたのは、種苗法改定についてネット上などで様々な意見が飛び交い、賛否が鋭く対立していたからです。大きく言えば「種子の特許反対」と「育種家の権利を守れ」という真っ向からの対立です。私は「何か欠けている」と感じました。これでは、実際に種子や苗から作物を育てている農業の現場が見えてきません。一番大切なのは農業の現場、つまり農家にとって種子や苗とどう向き合って作物を育てているのか、育種家はどんな思いで新品種を開発しているのか、そのことを知らないで論じあうのは不毛だと考えたのです。

命の源に向き合う農家の
姿と思いを訪ねて映像に

 種を企業に売り渡していいのか

画像  そこで北海道から種子島(鹿児島県)まで各地の農家を訪ね、それぞれの思いに耳を傾けました。取材した皆に共通することは、種子という命の源と正面から向き合い、食を守るという使命感を持っていることでした。

 映画の中で東京大学の鈴木宣弘教授は「今回の動きの背景に多国籍アグリビジネスの種子の独占が潜んでいる」と答えています。それは、種子を金もうけの道具にするということであり、私が映画で込めた農の営み、生命の多様性とは相いれない考え方です。種子や生命を一部の巨大企業の利益のために売り渡してはならないと思います。

 映画の見どころの一つは、山田さんと、種苗法改定賛成の立場の育種家、林慎悟さん(林ぶどう研究所、岡山市)との対話で、お互い一致点を生み出すところです。

 また、広島県が設立した森林整備・農業振興財団(農業ジーンバンク)による伝統野菜の発掘・調査、保存を通じて、希望する農家には種子を貸し出す事業を紹介しています。

 最後に、自然耕房ホタルファーム(北海道当麻町)の伊藤和久さんが「気候変動などで食料危機は目の前に迫っている。種子に権利を主張するのでなく、みんなで分かち合うときだ」とコメントしていることにも注目してください。

 今度の映画は、種苗法改定に反対の人はもちろん、賛成の人も、「よくわからない」という人もぜひ見てもらいたいと思っています。そして国会で拙速な結論を出すのでなく、慎重に審議してほしいと願っています。

 全国各地で緊急に上映運動に取り組み、大いに学習し、署名・宣伝活動を進めましょう。

 自主上映会申し込み

 上映料金 1回につき1万円+税
 上映用素材 DVD・ブルーレイ・オンライン(上映時間65分)

 問い合わせ先

 ▼きろくびと(担当・中山さん) Eメール info@kiroku-bito.com Fax 047(355)8455 ▼一般社団法人心土不二(担当・遠藤さん) 電話 03(5211)6880 Eメール info@shindofuji.jp

(新聞「農民」2020.11.2付)
ライン

2020年11月

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