森林組合、漁協、観光協会、研究者…流域ぐるみで
“地続可能な地域”めざす
和歌山
古座川流域プラットフォーム結成
紀ノ川農協 組合長
宇田篤弘
農林漁業の多面的機能を発揮させ
豊かな川と海、農山村を取り戻そう
家族農林漁業を大切にする地域
2019年6月に国連「家族農業の10年」を推進する「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)」が設立され、和歌山県でも「家族農林漁業プラットフォーム和歌山(FFPW)」を同年10月に立ち上げました。
FFPWは、家族農林漁業が持つ高い持続可能性を広め、和歌山を「家族農林漁業を最も大切にする地域」にするため、「家族農業の10年」に関するシンポジウムや講演会、学習会の開催、和歌山県の「食料・農林漁業・農山漁村関連政策」に関する政策提言や行政との対話を中心に活動し、県内食料自給率100%をめざします。
設立後は新型コロナ感染拡大で取り組みが足踏み状態でしたが、学校給食に安全安心な有機や自然農の農産物を提供できるようにと県内の3市で取り組みが進んでおり、持続可能な農業技術の勉強会も始まりました。
観光など課題の共有化を進める
20年8月には「古座川流域連携プラットフォーム」が設立されました。森林組合や漁業組合、観光協会、研究者も参加し、持続可能な古座川流域づくりをめざします。
|
古座川流域連携プラットフォーム設立総会 |
当面は、流域の農林漁業や観光業など、持続できる地域をめざす課題の共有化を進めます。設立総会では、和歌山大学観光学部の大浦由美教授に、県の林業の課題、可能性について記念講演をしていただきました。
県の農林漁業が持つ環境保全などの多面的な機能によって、基幹的な農林漁業従事者1人、1年間におよそ3600万円もの貨幣的価値を生み出しています(表、農林業センサスなどをもとに試算)。この多面的機能を社会的に評価し、県内木材をフルに活用し、豊かな森林を取り戻し、中山間地域の棚田を復活させて食料自給率を高めると同時に、災害に強い流域をつくることは、豊かな川と海を取り戻し、持続可能な地域を形成していくことになります。
経済の循環、所得の流出防ぐ
古座川流域連携プラットフォームは、次の4点をめざしています。
(1)古座川流域の事業者等が連携し、持続可能で自然豊かな流域の発展をめざします。
(2)農林漁業や観光業など、流域で営まれる事業の情報や課題を共有し、地域や都市への情報発信と流域との関係づくりを促進します。
(3)古座川流域の農林漁業と関連する事業が、再生し持続できるような政策を検討し、行政への提言や対話を行います。
(4)古座川流域での事業者等の事業や交流の連携を進めます。
「仕事があるなら田舎に帰りたい」と言われる方も少なからずいます。現実は、人口減少で、「経済効率」低下で事業所などの撤退が進んでいます。輸入の木材や農産物に依存するのではなく、モノやサービスの価格が高いか安いかではなく、地域での経済の循環、所得の流出を防ぐ取り組みが必要だと思います。
まだ小さな取り組みですが、農事組合法人「古座川ゆず平井の里」は、内水面漁協の冷凍アユの販売や地元業者のかつお節だしを使用した商品づくり(ゆず塩ぽん酢)を始めています。
コロナ禍で厳しい面ばかりが見えがちですが、林業や漁業、観光業などそれぞれの取り組み、将来への思いなどを行政関係者や地域住民の方にも伝えて、持続可能な地域づくりに参入してもらえるよう、シンポジウムの開催を考えています。
(新聞「農民」2020.11.2付)
|