「農民」記事データベース20201019-1429-08

ウンカが大発生!!

稲の収穫最盛期に西日本で深刻な被害


米価下落に減収が追いうち

 暑い夏が過ぎ、ようやく稲も穂をつけ、稲刈りの季節を迎えていますが、いま西日本各地で害虫のトビイロウンカが大発生し、稲刈り間近の稲にかつてないほどの大きな被害を与えています。

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中国から飛来した長翅(し)型(左)と日本で生まれた短翅型のトビイロウンカ

 トビイロウンカは、東南アジアから中国大陸を経て、梅雨期に梅雨前線に向かって吹く強い南西風に乗って飛来する体長5ミリほどの昆虫です。日本では冬には水田から稲がなくなるので越冬できず死滅しますが、繁殖力が強く、夏以降に高温少雨になると急激に増え、水田の一部に集中して稲の根元に付き、養分を吸い取り、枯れさせる被害(坪枯れ)を引き起こします。近年では一部の薬剤に対して抵抗性を持つトビイロウンカの飛来も報告されています。

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トビイロウンカによる坪枯れ

今年は岐阜、東海にも被害が拡大

 例年は九州地方が主な発生地域ですが、2000年以降でもっとも多発した昨年は近畿地方にも拡大し、今年はさらに愛知、静岡、岐阜県でも警報が発表されています。

 9月16日に警報が発表された兵庫県では、県が調査した100%の水田で発生が確認され、「被害の大きかった2014年よりも2倍以上の水田で要防除密度の発生となっている」と、県は強い危機感を持って警戒を呼びかけました。

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稲の根元に集まるトビイロウンカ

 西日本では米の作柄に大きく影響しており、最初に警報が発表された山口県では9月15日現在の作況指数は「83」、佐賀(警報)、長崎(注意報)の両県は「93」に落ち込んでいます。さらに各地での作柄低下が懸念されます。

 ※写真はすべて農林水産省植物防疫所「病害虫情報」から。


手刈りの手間重く、農家は踏んだり蹴ったり

奈良 農民連北和センター「北和だより」から

 奈良県では、47%ものほ場でウンカによる坪枯れが発生し(9月下旬の県の病害虫防除所の巡回調査)、稲刈り間近の稲に深刻な被害が出ています。

 ウンカの被害を大きく受けた川西町のAさん。とくにもち米の被害が大きく、防除薬を散布しましたが、被害は広がるばかり。田んぼではまだ稲の根元には白いウンカが付いていました。「今年はジャンボタニシ、ウンカと被害を受けつづけ、これで台風来たら踏んだり蹴ったりや」とAさん。毎年より早めの収穫を考えていますが、「枯れた稲は機械にからみつくから」と、先に手刈りしなければなりません。

 ウンカ被害は全県に広がっており、農家にとっては米価下落の上に、さらに大打撃となっています。引き続き北和センターでは、ウンカ被害の調査・アンケートの実施を考えています。

(新聞「農民」2020.10.19付)
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2020年10月

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