「農民」記事データベース20201012-1428-03

連載

もうゴメンだ!安倍・菅農政
(1)

今こそ最悪の農業つぶし政治の転換を


菅政治に未来はない
破たん済みの「安倍政治」継承

 7年9カ月にわたる安倍政権が幕を閉じ、スタートした菅義偉政権の2枚看板は「安倍政治の継承」と「自己責任」の押しつけ。

 官房長官として「農政改革を実質的に取り仕切った」(日本農業新聞)とされる菅氏。「安倍農政改革」は「安倍・菅農政改革」です。最悪の農業つぶし政治を断罪し、根本的に転換することが求められています。

 “懲りない面々”菅政権

 菅内閣が初閣議で決めた基本方針は、政権のめざす社会像として「自助・共助・公助」を掲げ、「活力ある地方を創る」対策として、外国人観光客の誘致、農産品の輸出促進、農業改革をあげています。

 国民がコロナ禍に不安を募らせている現状で自助=自己責任を押しつけるばかりか、99%も激減した外国人観光客の誘致(インバウンド)や、5兆円目標には遠く及ばない農産物・食品輸出という破たん済みの政策に頼るしか地方活性化の道はないという宣言です。

 かつて“塀(刑務所)の中の懲りない面々”という映画がヒットしましたが、コロナ禍がいつまで続くかわからない状態で、破たんが明白な政策を懲りずに繰り返すしかない――その行き詰まりは明らかです。

 加えて、国会所信表明もやらずに、菅首相がイの一番に会ったのは「安倍・菅農政」推進の代弁役を務めてきた財界代表でした。「気が短くて粘りが無い」安倍氏に比べて手ごわい「悪者」(浜矩子・同志社大教授)、「鉄仮面」「武闘派」と評される菅氏。新自由主義・農業つぶしの政治を強行する危険は強いといわなければなりません。

 出発点はTPP総自由化

 「安倍・菅農政改革」の出発点はTPP(環太平洋連携協定)です。12年12月の総選挙で「TPP断固反対、ウソつかない自民党」を掲げて政権に復帰したにもかかわらず、わずか3カ月後の13年3月にTPP交渉入りを決め、ウソとごまかし政治をスタートさせました。続いて日豪EPA(経済連携協定)、TPP11、日欧EPA、日米貿易協定など、次々に自由貿易協定を締結してきました。

画像  とくに総自由化のホコ先にされた畜産の打撃は大きく、輸入の激増と自給率急低下が同時進行で進みました(図)。牛肉の自給率は35%、チーズは13%に落ち込み、さらに、今年1〜6月の牛・豚肉の輸入量は史上最大になりました。

 除草剤(グリホサート)汚染のパン、成長ホルモン入りの牛肉・豚肉、残留農薬たっぷりの野菜・果物……。食の安全は決定的に脅かされ、「安全な食料は日本の大地から」と願っても、日本農業が衰退すれば後の祭になりかねません。

スカノミクスの危険性明白

 的はずれの“スカノミクス”

 菅首相の手法は、政策の全体像や国家ビジョンを示さずに、携帯電話料金値下げやデジタル庁新設など、あれこれの一点突破政策を繰り出すやり方。“アベノミクス”ならぬ “スガノミクス”ですが、むしろ“スカノミクス”というべきです。“スカ”=的はずれ。

 的はずれの一つは外国人観光客の誘致(インバウンド)です。安倍政権が16年に決めた「観光先進国ビジョン」の目標は、20年4000万人、30年6000万人でした。一方、今年4〜8月の訪日客は月平均4000人弱で、前年比マイナス99・9%。うち外国人観光客は5月が108人、6月が224人。

 「インバウンドは“消滅”した。もう二度と戻らない」というのが業界の見立てです。“消滅”したインバウンドにしがみつき、地方活性化の決め手にせざるをえない――これは“大スカ”か“大ボラ”といわざるをえません。

 もう一つの的はずれは農産物輸出です。

 今年3月、菅官房長官は自民党内の批判を封じて「農林水産物・食品輸出5兆円目標」を押し切りました。しかし目標5兆円に対し、19年の実績は0・9兆円。コロナ禍のもとで輸出はさらに落ち込んでいます。一方、農林水産物の輸入は9・5兆円で、輸出の10・5倍です。

 輸出戦略の目玉は和牛輸出です。3月に決めた「基本計画」では、生産を1・2倍に増やし、輸出を12倍に増やすとうたいましたが、コロナ禍で輸出と外食需要は激減。牛肉の価格安定制度(マルキン)の破たんも放置したままで、和牛・輸入牛肉在庫の増加に打つ手なしというのが実態です。これで和牛増産などとは、夢想にすぎません。

「農産物輸出大国」などとはしゃぐ一方で、国内の農産物市場は輸入食品に根こそぎ奪われる――“スカノミクス”の危険は明白です。

(つづく)

(新聞「農民」2020.10.12付)
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2020年10月

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