「農民」記事データベース20200928-1426-01

菅新政権が発足

「自己責任」の国づくり

強まる新自由主義の暴走


菅政権に未来はない
総選挙で決着を!

 まるで「第3次安倍内閣」

 9月16日、「安倍政治の継承」を最大の看板にかかげる菅義偉新政権がスタートしました。政策の看板も自民党・内閣の主要メンバーも、ほぼそっくりそのまま。前のオーナーが使っていた設備や什(じゅう)器などをそのまま使用する物件を「居抜き物件」といいますが、新内閣は、さながら「居抜き内閣」です。

 二階俊博幹事長(81)と麻生太郎副総理(79)という二本柱はそのまま残し、残留・横すべり組は20人中11人、再入閣の4人はいずれも旧安倍内閣からのUターン。初入閣したのは5人で、岸信夫防衛大臣は安倍晋三氏の実弟、平沢勝栄復興大臣は晋三氏の元家庭教師、野上浩太郎農水大臣は官房副長官を16〜19年にわたって務めた人物……。

 さらに安倍カラーが強まった「第3次安倍内閣」というべきです。

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自民党総裁選挙候補者討論会でボードを手に意見を述べる菅義偉官房長官(当時)=9月12日、東京都千代田区の日本記者クラブ

 コロナ失態の主犯を官房長官に

 横すべり組の代表格、加藤勝信氏(厚生労働相⇒官房長官)は、新型コロナ対策で「検査は37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合に限る」という基準をつくり、批判を受けると「それは国民の誤解だった」と開き直り、さらに「検査能力が2万件あっても、2万件やるとは言っていない」と答弁するなど、安倍政権の失態と検査サボタージュの張本人です。

 こういう人物を内閣の要に据えて、「コロナ対策に全力を注ぐ」と言われても、とうてい信用できません。

 単なる「続安倍政権」ではない

 同時に指摘しなければならないのは、菅政権が単なる「続安倍政権」にとどまらない危険性にあふれていることです。

 官邸に徹底抗戦して更迭された前川喜平元文科省事務次官は指摘します。「菅氏は安倍氏以上に危険だと思う。安倍政権の権力を支え、内政を仕切ってきたのは、菅氏だからだ」と。

 菅首相の言動の特徴は、思いやりも対話をする意思も感じさせない「素っ気なさ」です。菅氏の発言をいくら聞いても、国づくりのビジョンは何一つ示されておらず、驚くほど中身がありません。安倍政権の功罪を問われても「アベノミクスで雇用が増えた」「森友・加計・桜の政治疑惑は決着済み」などと繰り返すだけで、多少とも人間味がある話は「地方出身の苦労人」程度。中身のなさは総裁候補中、群を抜いています。

 「公助」こそが政治の役割

 そんな菅首相が唯一示している国づくりビジョンは「『自助・共助・公助』の国づくり」。菅氏自身が「基本は自分、そして家族、地域で頑張るが、駄目なら国が面倒を見るという社会」と説明しています(北海道新聞、3月28日)。

 菅氏は一方で「国民のためになる政治」を強調していますが、政治の役割は「公助」を充実させることであって、自助、共助に口出しするのはもってのほかです。菅ビジョンは、平時であっても絶対に受け入れるわけにはいきません。

 ましてや「自助」ではどうにもならないコロナ禍の真っ最中に「自助」=自己責任を押しつける――こんな政治に存在価値はありません。社会的弱者を無視し、国民に「自己責任」を押し付ける冷酷な新自由主義の暴走が、菅政権のもとで、これまでよりいっそうひどくなることを強く警戒しなければなりません。

 安倍農業つぶし政治の「主犯格」

 「農家の長男坊」を売り文句にする菅首相の農業政策はどうか。

 菅氏自身が「政策について各省庁を束ねることができるのは官房長官だけ」と話している通り(毎日新聞インタビュー、9月4日)、安倍農政改革を実質的に取り仕切ってきたのは菅官房長官です。

 菅氏は、国民全体に奉仕するべき公務員を権力の私兵にして支配し、規制改革推進会議などの官邸直属機関を操って、農協改革や主要農作物種子法(種子法)廃止、米生産調整の「農家の自己責任化」、日米貿易協定など、戦後最悪の農業つぶしを強行してきた「主犯格」です。

 首相になった今、コロナ禍で無残に破たんした農産物輸出と外国人旅行客誘致(インバウンド)による農業・地方の復興という夢にしがみつき、自己責任押しつけの規制改革を「政権のど真ん中に置く」と宣言しています。

 農業・農村つぶし政治の破たんをただす意志も能力も持ち合わせず、破たんした道を「この道しかない」と突き進む政治に未来はありません。

 憲法改悪、消費税再増税も

 さらに菅首相は、憲法改悪、消費税引き下げの拒否と再増税、官僚支配の強化、政治私物化疑惑解明の拒否なども公言しています。

 こういう政権に日本の政治のかじ取りをまかせるわけには絶対にいきません。市民と野党の共同を発展させて政権交代を実現し、国民が主人公の新しい政治、家族農業を基調とする農業政策に転換させために、今こそ全力をあげようではありませんか。

(新聞「農民」2020.9.28付)
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2020年9月

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