安倍首相、政権投げ出し安倍政治とのたたかい
|
辞意を表明する安倍首相=8月28日(首相官邸ホームページから) |
病に倒れた人を批判するのは、普通はためらわれるものですが、新聞論調はなかなか手きびしい。「『安倍政治』の弊害 民主主義ゆがめた深い罪」(毎日)、「安倍首相が退陣表明 強権と隠蔽(いんぺい)体質の果てに」(北海道新聞)などなど。
安倍首相の辞任は、国民世論に追い詰められた結果です。戦争する国づくり、「森友・加計・桜」などの政治の私物化、2度におよぶ消費税増税をはじめとする国民生活破壊など7年8カ月の悪政に加え、行き当たりばったりの新型コロナ感染症対応に対する国民の批判、宿願の憲法改悪はお先真っ暗、河井前法相らの選挙買収事件が飛び火する恐れ……政権が火だるまになる前に、「史上最長政権」を唯一の「レガシー(遺産)」に、2度目の政権投げ出しを行ったのが実態です。
7年8カ月にわたる「負の遺産」に苦しめられ、これからも苦しみをなめるのは私たち国民です。しかも、最も有力な後継候補といわれている菅官房長官は「安倍路線継承に全力をそそぐ」と言い放つなど、安倍政治礼賛の大合唱になっています。
国民に追い詰められて辞任に追い込まれた安倍政権にもかかわらず、安倍政治を続けざるをえない政権党の劣化は目を覆うばかりです。
安倍首相が辞めても、安倍政治に対するたたかいの決着はついていません。総括と断罪をきっちり行うことがどうしても必要です。
言うべきことは数多くありますが、マスコミ報道が空洞になっている農業・食料の問題を中心に見ていきましょう。
続いて日豪EPA(経済連携協定、15年)、TPP11(18年)、日欧EPA(19年)、日米貿易協定(20年)など、次々に自由貿易協定を締結して日本農業に深刻かつ重大な打撃を与えてきました。
史上最悪の自由化政権です。これを進めるにあたって、安倍政権が駆使した「狡猾(こうかつ)・強権」ぶりは際立っています。
(1)「族(毒)をもって族(毒)を制する」と称して、自民党農林族の江藤現農水大臣や西川元農水大臣を使って自民党を抑えこみ、(2)官邸人事によって農水官僚を牛耳り、(3)当時、TPP反対の国民的な運動に加わっていた農協系統に対しては「農協解体」で恫喝(どうかつ)したのです。
「TPPは私の経済政策・アベノミクスを支える主柱だ」「私は既得権益の岩盤規制を破壊するドリルの刃になり、40年以上続いてきた米の減反を廃止し、民間企業が障壁なく農業に参入できるようにする」「日本を企業が世界で一番活躍しやすい国にする」
ここから「安倍農政改革」の暴風が吹き荒れます。ねらいは、戦後の農地改革で生まれた家族経営を守る農業政策の枠組みの破壊でした。
表のように、農協や種子法、農地制度、国境保護、米の生産調整、価格保障などが、ことごとく「岩盤規制」と非難され、「ドリル」の刃があてられてきました。
しかも、そのやり方は、首相官邸お好みの人物を規制改革推進会議などの委員に任命し、わずか1時間程度のお粗末な議論で乱暴な提言を出させて法案を閣議決定し、あとは国会で強行採決するだけというやり方で、国会も国民も無視した強権政治そのものでした。
また、戸別所得補償を廃止し米農家経営を不安定化させ、14年産米は1万円を切るほど大暴落させたことも、絶対に許すわけにはいきません。
菅官房長官は安倍政治の共犯者です。菅官房長官が「安倍農政改革を主導した」(日本農業新聞)といわれる通り、「酒を飲まず、情報収集と人脈構築に没頭した」菅氏が“主犯”なのかもしれません。
いずれにしても、安倍政権の終えんは新しい激動の時代の始まりです。安倍政治を名実ともに終わらせるためには総選挙で決着をつけなければなりません。
農民連は、市民と野党の共同を発展させて政権交代を勝ち取り、国民が主人公の新しい政治、家族農業を基調とする農業政策に転換させために全力を尽くす決意です。
[2020年9月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2020, 農民運動全国連合会