気象リスクが常態化
記録的な長雨の後に干ばつと猛暑が直撃
根菜・果菜は大減収、果樹も不作
毎年つづく「夏の不作」
7月の長雨、梅雨明け後の猛暑と水不足で、各地の農業生産に大きな被害が発生しています。
7月は、世界でも1891年の統計開始以降、4番目に高い気温となり、日本付近では梅雨前線が長期にわたって停滞。1946年の統計開始以来、西日本では太平洋・日本海側ともに、東日本では太平洋側で、もっとも多雨で、日照時間が短い異常な梅雨となりました(図を参照)。ところが梅雨明け後は一転して、異常な猛暑と水不足が続いています。
「夏の不作が3年にわたって続いており、異常気象が常態化している。生産者は出荷時期をずらすために計画的に植え付けているが、天候不順で作物が計画通りに成長せず、予定通りに出荷できなくなった」と言うのは、奈良県農民連の直売所「旬の里まみが丘」の店長、杉村出さんです。
奈良県では、根菜類は7月の長雨で腐ってしまい、収量が激減。収穫できても品質は悪く、市場では品薄・高値が続いています。果菜類も被害が大きく、長雨で樹体が弱っていたところに梅雨明け後は干ばつとなり、収穫どころか木が枯れてしまいました。何十年もやってきたベテラン農家も「こんなのは見たことがない」という厳しい状態になっています。
この他にも、「ブルーベリーも例年では9月中旬まで収穫できるところ、水不足で今年はお盆明けには実がなくなってしまった。梨、柿などの果樹も長雨とその後の水不足で、樹体にダメージを受け、生育途中で広範に落果している。収穫最盛期はもう少し先だが、収量は大幅に減るのではないか」と杉村さんは懸念しています。
秋冬野菜の品質低下も心配
関東地方でも打撃は深刻です。千葉県の房総食料センターの山本和代さんは、「野菜はどれも減収しているが、もともとこの時期は出荷物の少ない時期なので、被害も壊滅というほどではないのが不幸中の幸い」としつつ、「今は秋・冬野菜の植え付けや畑の準備のシーズンだが、長雨で畑にトラクターが入れられなかったりして、準備が不十分なまま種まきせざるをえない事例もあり、秋以降の品質に影響が出ないかと心配している。今後は台風も心配だ」と言います。
また、梨(幸水)では5月の遅霜、7月の長雨、梅雨明けの猛暑と、悪天候続きで品質が急激に悪化し、1個も出荷できないという生産者も出ています。
果樹では、この他にも被害が各地に出ています。長野県の上伊那農民組合の竹上一彦さんは、「7月に25日間も降り続いた雨で、ブルーベリーの実が割れて、収量が半減。リンゴは今のところ目立った被害は出ていないが、このまま異常高温が続けば、実の日焼けが問題になってくるだろう」と話しています。
(新聞「農民」2020.8.31付)
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