種子条例
群馬県で制定・施行
新品種育成に予算の裏付け
群馬県では6月23日に種子条例が制定、施行されました。群馬農民連も制定求めて運動してきました。国の突然とも言うべき種子法(主要農作物種子法)廃止を受け、群馬県では要綱を制定し、種子供給を続けてきました。
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有望そうな系統を刈り取り、収量や粉の性質の良否をみる小麦育種選抜風景 |
私は農業試験場でこの仕事に携わってきました。長年同じ仕事で交流してきた栃木県農業試験場元職員の山口正篤さんが、種子法をもとに県の試験場が果たしてきた役割を2018年1月1日付の本紙に簡潔に紹介してくれています。そこで、昔の話を書きます。
1980年に種子法の大幅改正がありました。バイオテクノロジーブームにのり民間でも稲の品種改良が行われる中、「種子生産に民間の活力を阻害しているため」が改正の理由でした。これにより品種選定と種子供給の費用の国庫補助が廃止され、都道府県は単独で予算を確保することになり、そのために財政部局と長々とやりとりがありました。
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稲交配は、品種育成のために交配をした後、他の花粉がかからないよう袋をかける |
もう一つ、「民間に合わせる」とのことで90%以上となっていた種子の発芽率を80%まで落としました。発芽率落としに反対しましたが、農水省の担当者は、これであれこれ難癖をつけられなくなったのでのんでくれ、との説明でした。
その後、自らの育成品種の種子販売を行った一部の会社以外、種子供給事業に参入した民間はありませんでした。民間が参入しない理由の議論もないまま種子法が廃止になったのは、国会のいい加減さを見せつけられた思いです。
今回の県の種子条例では、従来の奨励品種などの選定とその種子の安定供給という大きな柱のほか、新品種の育成を行うことが明記されました。育種事業に予算の裏付けができ、画期的な条例を制定してくれたと感謝をしています。ノウハウを持った職員の力でスムーズに復活できることを期待しています。
(群馬・西毛農民連 折茂佐重樹)
(新聞「農民」2020.8.24付)
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