大豆の収穫前散布
ホクレンが事実上禁止に
グリホサート
農民連食品分析センター検査が力に
国内最大の大豆生産地、北海道でホクレン農業協同組合連合会(ホクレン)は、除草剤グリホサート(商品名ラウンドアップなど)について、大豆収穫前の散布を事実上禁止しました。
現在、日本では、収穫前の大豆に散布することによって、雑草が枯れ、機械作業性などが改善、汚粒発生を防ぎ、品質向上が狙える方法として農水省が使用を許可しています。一方、収穫前散布は農薬が残留しやすい傾向があります。
北海道で大豆畑にグリホサートが散布されているかもしれないという情報を得た「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(キャンペーン)が1月、市販されている北海道産大豆7製品の残留農薬検査を農民連食品分析センターに依頼し、調査の結果、ホクレンの大豆からグリホサートが検出された(表)ことがこの問題の発端でした。
キャンペーンは、ホクレンに、日本消費者連盟と連名で3月17日と4月14日に公開質問状を提出。分析センターの検査結果を示し、「大豆への収穫前グリホサート使用中止」を求めました。
これに対し、ホクレンは4月27日に回答を寄せ、「グリホサート剤の落葉終期〜(収穫)14日前での使用は、品質低下ならびに適用外となるケースもあることから使用を控えることとし、令和2年産以降、上記登録内容で使用した場合、JAの大豆共計(共同販売)では取り扱わないこととする」と決定したことを明らかにしました。
ホクレンの決定を受け、道内の各農協は、「北海道産大豆の信頼(安全・安心)を確保するため」に、収穫前にグリホサート剤を使用しないよう生産者に連絡しています。
3回の公開質問状で使用禁止に追い込む
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表 天笠啓祐さん
世界的に、除草剤グリホサートの危険性への認識が強まり、米国では訴訟が起き、被害者勝訴が相次ぎ、各国で規制が進む中において、日本では官民ともにその認識が薄いのが現実です。
私たちは、安全な国産を食べようと呼びかけているにもかかわらず、北海道産の大豆にグリホサートがプレハーベスト農薬として使われていることを知りました。しかもその農薬が大豆に残留し、食の安全を脅かしていることも分かりました。農薬企業が推奨しホクレンが宣伝し、農家が使用してきたのです。
そのため私たち「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」と日本消費者連盟は、昨年10月にホクレンに対し使用中止を求めて公開質問状を出しました。それに対してホクレンは「農薬取締法を順守した適正な使用」と回答しました。そのため3月に、農民連食品分析センターの検査結果を添えて、再び公開質問状を出し、重ねて中止を求めました。しかし、それに対する回答も前回同様でした。
そこで4月にもう一度公開質問状を出しました。3回目にしてホクレンからプレハーベストでの使用を控える旨の回答が来ました。分析センターの検査結果を示し、繰り返し質問状を出すことで成果を上げたといえます。
また、私たちは、グリホサート使用を止めさせる運動の一環として、鉄道会社22社に対し、敷地内で使用しないよう、3月に質問状を出しました。
それに対して、「使用していない」と回答してきたのは近鉄だけでした。JR各社、他の大手私鉄は使用しているという回答か、回答拒否でした。そのため6月に再び質問状を出しました。中止させるまで、繰り返し質問状を出すつもりです。
「収穫前不使用」は当然の判断
北海道農民連書記長 富沢修一さん(岩見沢市)
多くの農家が危険の認識なく使用
私たち農家が、「土壌中ですぐに分解し安全」と宣伝されたグリホサート除草剤を使い始めて40年。当時は高価でしたがその後特許が切れ、安価な輸入品グリホサート剤も出回りました。
今はジェネリック商品もあり、農家の規模も大きくなり「重労働の草刈り作業」が「除草剤散布作業」になっています。
国の残留基準緩和で、畦、農道などほ場周辺での使用から、小麦や直播稲の種まき前に使うなど使い方が広がり、「割安」?な200リットル入り容器の販売品もあり、防除機を使った大量散布が進み、そのひとつが「大豆収穫前の散布」です。
グリホサート剤を使う農家は、「危険な農薬」という認識は少なく、飛散しにくい散布ノズルを使うので、マスクなしで散布しています。昨年、私の地域の大豆畑ではグリホサート除草剤で草を枯らしてから収穫しましたが、農家も消費者であり「違和感」をぬぐえませんでした。
農家の健康守るためにも
農薬の弊害学ばなければ
グリホサート、ネオニコの被害を考える
作物ごとに多様な除草剤がいろいろな生育過程で使われ、除草剤などが他人のほ場に飛散し、被害を与える事故は少なからずあります。このような事故に対応する保険もあります。
道農民連は、昨年11月にグリホサート除草剤などの残留検査をホクレンに求め、12月のグリホサート除草剤、ネオニコチノイド系殺虫剤などをテーマにした「食と環境を考える国際講演会実行委員会」に参加しました。
今年2月には、農民連本部の齋藤敏之常任委員を招いて札幌、岩見沢で「食の安全を考える講演会」を実施し、グリホサート剤などの問題を提起してきました。
私も地元の農協との懇談会で「グリホサート除草剤、ネオニコチノイド系殺虫剤の危険性を、農家の健康を守るためにも農協としても問題視すべき」だと、発言してきました。
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管理が行き届いた大豆畑(新篠津村) |
農民・生産者の健康を守る活動の重視を
私たちも日本消費者連盟とホクレンとのやり取りには注目し、今回の事実上の「大豆収穫前のグリホサート除草剤不使用」は当然の判断と考えています。
除草剤、農薬散布による最初の被害者は農民・生産者で、農民・生産者の健康を守る活動も重視すべきと考えています。
また、道農民連事務所の近所にある就学前の発達障害の子どもを支援する施設職員と話した際、「農薬などの化学物質が発達障害の要因のひとつと指摘する研究者いる」ことを初めて知りました。がん患者、発達障害児などの増加は化学物質が原因のひとつという指摘を、多くの方に知ってもらう活動が大切と考えています。
(新聞「農民」2020.7.20付)
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