玉ネギ
生産費を割る大暴落
大産地、淡路島からの現地リポート
兵庫 蛭子(えびす)智彦さん(淡路農業を守る会)
何万トンも産地廃棄させて輸入野放し、価格押し下げ
今年の兵庫県淡路島の玉ねぎシーズンは、生産原価割れのキロ30〜50円の相場価格で始まりました。
例年、淡路島では4月中旬から本格的な玉ねぎ収穫シーズンが始まります。
4月中旬は、品種でいえば極早生(ごくわせ)品種、これが4月下旬から5月中旬にかけて早生品種に代わり、その後中生(なかて)品種が6月上旬、そして6月末までで晩生(おくて)の品種へと産地内リレーが続きます。
北海道産の在庫残り、佐賀産の豊作、そして、コロナ感染症の影響による売れ行き不振で、4月中旬から5月上旬にかけての価格は悲惨なものでした。
気候変動で病害や品質の低下も
その後、産地廃棄などの処理が続き、6月上旬にはキロ当たり150円の相場も生まれるなど急激な価格の反動が起こっています。現在ではキロ120円前後で推移し、農家はほっと胸をなでおろしていますが、感染拡大の第2波、3波の可能性も含め国内需要の低下が心配されています。
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玉ねぎが10キロ510円であることを示しています |
また、気候変動の影響も受け、高温が続き病害も多く発生し、保存中の品質の極端な低下による影響も気がかりとなっています。
玉ねぎ産地とはいえ、高齢化などにより、作付面積は減り、統計データによると昭和60(1985)年度の作付面積は3250ヘクタール、収穫量18万トンでしたが、現在では、作付面積1300ヘクタール、収穫量8万トンまで落ち込んでいます。その結果、兵庫県は北海道に次ぐ第2位の産地でしたが、佐賀に追い越され、全国で3番目の産地となってしまいました。
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収穫を控える玉ねぎ(南あわじ市) |
人手不足も深刻で、重労働、病気のまん延、機械化、農薬費の増加などのコストアップにより、価格の低迷が玉ねぎ離れを招いています。手取りキロ100円が採算点ですが、市場売り値が平均で70円、ひどいときは今年のように30円にまで落ち込みます。
生産者泣かせる政治を変えよう
その原因は、輸入タマネギです。全国の生産量は124万トンといわれますが、輸入タマネギは、30万トンあり、価格を押し下げています。卸値価格の平均は、国産品91円、輸入品67円となっています(いずれもキロ単価)。何万トンも産地廃棄して、輸入タマネギが野放し――これでは生産者は泣くばかりです。こうした政治をどうしても変えなければなりません。
(新聞「農民」2020.7.13付)
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