農村・中山間地の医療支える
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コロナ禍のなかで患者受け入れに尽力した相模原協同病院(相模原市緑区) |
しかしコロナ疑いの患者の対応であっても、陰性が判明するまでは陽性者と同じ対応を取らざるをえず、緊張とストレスを抱えながら働いています。それに加えて病院として、患者の動線振り分け、完全防護への対応、空きベッドの確保、汚染空気を外に出さないための陰圧室の整備など、多大なコストや人員配置を迫られます。
また院内感染が起きれば、約2週間の外来休止にもなり、コロナ患者受け入れの少ない(ない)病院でも、かなりの風評被害が起きました。
春期の検診事業も多くで中止、感染を恐れて受診されない方も増えたことで、入院・外来ともに1〜3割に及ぶ患者の減少、単月で億単位の収益悪化があった病院もあります。
今のところ約6割の県では夏季一時金の水準は維持されていますが、今後も、受診抑制やコロナの第2波・3波が秋冬に起こったならば、人件費削減など厳しい「合理化」の動きはもちろん、一部の病院では診療維持に関わる問題も出てくる可能性があります。
病院へもコロナ患者を受け入れたといううわさだけで、苦情の電話が寄せられたり、感染防止のため、患者の面会制限を行ったことにも家族から強いクレームが出されたり、などの事例もありました。
物資不足の問題では、マスクは1〜2日に1枚配布という状況から、一時期は1週間1枚支給という病院もあり、ガウン等はどこの病院でも手作りでの対応を迫られています。
コロナ病棟へのチームには、若い人や単身者が選ばれることが多いのですが、そのリスクゆえに「行くなら辞めたい」という看護師が出てきたり、むしろ戦中のように「志願兵」を募集するかのような師長命令が強制されたりなどの事例も出てきています。
また残された方の一般病棟では、人手不足となり、夜勤日数が増えてしまったなど労働条件の院内格差も起きてしまい、職員間にも様々な不信感や分断が生まれています。
さらに、実際に重症患者に接した看護師らは、治療のかいなく亡くなったことに看護の無力さを感じてしまったり、コロナ対応をめぐって、現場の医療従事者の「心が折れる」事態がじわじわと広がっている感じです。
今は東京圏と北海道、関西の一部で感染者が出ている状況ですが、やはり第2波・3波が起きた時の抜本的な対策が講じられなければ、医療分野からの労働者の流出は避けられないと思います。ただでさえ地方には医療従事者が集まりにくく、貴重な医療資格者を失ってしまえば、再び増やしていくことは容易ではありません。
コロナによって都市集中型社会のぜい弱さや「新自由主義」による市場化・効率化の問題が誰の目にも明らかになってきています。国が「地方創生」をうたうのであれば、人々の生活・成長に欠かせない医療・介護や教育・保育の充実、農業などの1次産業や生活・医療資材などの国内産業の復興によって、人々が地方に集まり、安心して生活できるように、今こそ国の根本的な政策転換が求められているのではないかと思います。
(※)北海道、秋田、福島、長野、栃木、茨城、神奈川、静岡、愛知、岐阜、三重、新潟、富山、広島、山口、香川、徳島、高知、大分、鹿児島。栃木のみ上都賀・佐野の郡厚生連
[2020年7月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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