本の紹介
『新しい小農〜その歩み・営み・強み〜』
萬田正治・山下惣一監修、小農学会編著
小規模・家族農業を担う小農(しょうのう)は、世界の農家の大多数を占め、じつに食料の8割を供給。環境への負荷が少なく、持続可能で理想的な農業形態を成り立たせているとして内外で再評価されています。
日本では、農業の成長産業化が推し進められ、コスト競争と市場原理優先の流れがあるなかで大規模化、効率化ばかりがいわれ、これまで立国の礎となって地域の営農や暮らしを支えてきた小農の存在は見落とされがちで、必ずしも政策面での手厚い対象となっていません。
そこで、本書は、小農学会(2015年発足、萬田正治・山下惣一共同代表)が小農の時代の必要性を明らかにするため企図したもので、執筆者は10人です。
第1章「どこの国でも小農は立国、救国の礎」、第2章「国連『小農宣言』と海外の小農再評価」、第3章「百姓・生産者・小農と100年の変遷」では、世界の農業が小農重視の潮流になっていること、小農がかつての零細農から自立的に暮らす希望の種型小農にドラスティックに変容しつつあることを指摘。また、第4章「多様性・持続性こそ小農の真骨頂」では営農を軸に消費者、若者、都市住民などとつながりを持ちながら、それぞれの農的暮らしを築き上げている実情が興味深く報告されています。
小農の歩み、営み、強みを述べながら、現代の小農の位置づけ、必要性に理解を深めるのに格好の一書。国連の「家族農業の10年・「農民の権利宣言」採択にちなむ連動企画です。
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A5判・188ページ・定価2200円
申し込み・問い合わせ 創森社 電話 03(5228)2270、Fax 03(5228)2410
(新聞「農民」2020.7.6付)
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