「農民」記事データベース20200706-1415-03

コロナ禍から畜産と米を守れ

農民連が農水省に要請


マルキン交付金減額するな
さらなる直接支援の強化を

 コロナ禍で価格下落が著しい牛肉と、在庫の増加で出来秋の価格下落が懸念される米の問題で、農民連は6月24日、農水省に緊急の要請を行いました。

 肥育牛の価格下落時の対策としては、販売額が生産費を下回った場合に差額の9割が補てんされる「肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)」制度があり、事業費財源は国が4分の3、生産者負担金が4分の1となっています。国はコロナ対策として、生産者負担金を当面6カ月間、実質的に免除するとしましたが、同時に交付額(補てん金)も国費分だけの67・5パーセントに減額され、東京、山口、沖縄の3都県では3、4月分の給付から減額が始まっています。

 さらに枝肉価格の下落で交付水準が高くなり、生産者の積み立て財源が不足する地域も続出。4月分は16都県で、生産者負担金を納付した牛でも国費分しか支払われない事態となっています。

 また、牛マルキンの算定方式が突如として5月から変更され、県単位からブロック単位の算定となり、交付額が大幅に減る地域も出てきています。

 要請では、牛マルキンの農家負担金の免除継続とともに、交付額の減額はやめて、不足分は政府が手当てすること、また算定方式は従来通り都道府県ごとの地域算定方式を認めるよう、求めました。

 要請で、福島県農民連の佐々木健洋事務局長は、「もともと福島の牛肉は原発事故の影響で安いのに、算定方式の変更で交付額が1頭あたり10万円も減額になる。県の担当者も『国からの説明は何もない』と困惑していた。地域に説明もなく、一方的に制度変更するべきでない」と訴えました。農水省は、「発動する県としない県があり、不公平だとの声もあって、急激な価格下落を受けて急いで見直した。今後も現場の声を聞いて、生産が続けられるように努力したい」と答えました。

 ウェブ会議アプリでの参加者からは、「肥育牛の価格下落で、次の子牛が買えないために、子牛価格も暴落している。農水省は生産者の不安を取り除き、経営継続できるようにしてほしい」(宮崎)、「マルキンは下落幅に交付額が見合っていない。今の支援メニューでは桁が違う。1頭あたり数十万円の単位で支援策を強めてほしい」(岩手)と要望しました。

 笹渡義夫会長は、「価格下落が大きすぎ、牛マルキンだけでは対処しきれなくなっている。補正予算の10兆円の予備費もあるのだから、国の財政支援を強化して、従来の枠組みにとらわれないコロナ対策にしてほしい」と重ねて訴えました。

米の在庫増に危機感
あらゆる対策を検討

農水省

 米の問題では、コロナ禍で需要が「消滅」し、2019年産米の4月末在庫が13万トンも積み上がり、20年産米の出来秋を待たずに早くも米価下落が始まっていることを、具体的に指摘。19年産米を市場から隔離するなどして、20年産米の下落を阻止するよう、要求しました。

 農水省は、コロナ禍の影響で在庫が増加していることを認めた上で、「14年産米の下落時は、価格回復に3年かかった。あのような事態は避けたい。現在シミュレーションを行っており、対策も検討している」と回答。参加者は、「価格下落はさせないという国の明確なメッセージを早急に打ち出すことが必要だ」と強く求めました。

 要請には、日本共産党の田村貴昭衆院議員が同席しました。

(新聞「農民」2020.7.6付)
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2020年7月

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