家畜飼養基準改定
世論が方針転換を阻止
指定地域内でも放牧が可能に
家畜伝染病予防法(家伝法)の改正にともなって改定作業が進められていた「飼養衛生管理基準」に、5月半ばになって突然、「舎外飼養の禁止」と、それに備えて「畜舎を確保」するとの項目が盛り込まれていた問題で、農水省は6月16日、パブリックコメント(国民からの意見募集)に「放牧中止の文言の削除」を求める声が殺到したことなどを受けて大幅に内容を修正し、これらの文言を削除した新たな飼養基準を正式に策定しました。
農民連・畜全協(畜産農民全国協議会)は「放牧中止の文言の削除」などを求める意見をパブリックコメントに送付するとともに、6月15日に日本共産党の田村貴昭衆院議員の力添えで農水省消費・安全局から説明を受けました。農水省によると、この件でパブリックコメントに寄せられた意見は約2000件に及び、その多くは「放牧中止の文言の削除」を求めるものだったとのことです。
豚・いのししの飼養基準では、「放牧場、パドック等における舎外飼養を中止し」との文言を削除し、新たに、大臣指定地域では放牧場の給餌場所への防鳥ネットの設置、また夜間などに豚を一カ所に集めて管理できる設備の確保が加えられることになりました。また大臣指定地域外での放牧制限準備のための「飼養できる畜舎」は、「収容できる避難用の設備」でよいとされ、「屋根は必要なく、壁の代わりにネットなどでもよいという方向で、現在、詳細な基準を作成中」と農水省は説明しています。
牛や山羊についても豚と同様に、大臣指定地域の「放牧中止」が削除され、放牧中止準備のための「飼養できる畜舎」は、「収容できる避難用の設備の確保」または、出荷・移動のための準備措置(あらかじめ計画をたてておくなど)でよいとされました。また大臣指定地域の発動を想定する家畜伝染病は口蹄(こうてい)疫で、「発生時は家伝法第34条に基づく放牧制限で対処する」としています。
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運動場でくつろぐ繁殖和牛 |
一方、意見の多かった犬や猫などの愛玩動物の飼育については、豚熱で畜舎への侵入ルートになった事例もあり、感染拡大リスクがあることから、衛生管理区域内での飼育や持ち込みは禁止されることになりました。
(新聞「農民」2020.6.29付)
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