コロナ対策第2次補正予算案
農家の苦悩に向き合わない
ケチケチピンぼけ予算
政府は5月27日にコロナ対策の第2次補正予算案を閣議決定しました。
第2次補正予算は第1次(25兆円)の3割増の32兆円で、世論と野党の論戦におされて、医療支援、家賃支援、雇用調整助成金の上限額の引き上げなど一連の拡充策が盛り込まれました。国民の声が政治を動かした結果です。同時に、自民党内から「本来は第1次補正予算に盛り込まれるべきだったもの」との指摘の声があがるように、小出しで後手後手の対策という批判に応えるものにはなっていません。
安倍首相は「空前絶後の規模」「世界最大の対策」と自画自賛しています。
本当なのか?
農民連は6月4日、農水省から説明を受けました。
農林水産関連の補正予算は第1次が5448億円、第2次が658億円で、それぞれ補正予算全体の2%、0・2%。金額も中身も貧弱で、農家の苦悩に全く向き合わない“ケチケチ”“ピンぼけ”予算です。
「持続化給付金を受けられない農家の救済策として、99%の農家が対象になる」と江藤拓農水大臣が打ち上げた「経営継続補助金」は200億円が計上されていますが、想定件数は約2万件、販売農家戸数の1・7%にしかなりません。内容もコロナの救済ではなく、感染拡大防止策を行いつつ、国内外の販路の回復・開拓、機械・設備の導入費用に対し、4分の3を補助するもので、まったくの期待外れです。
外国人観光客ゼロ、輸出激減、3〜5月の休校による学校給食中止、飲食業の自粛・閉店などなど、農水産物の需要の“蒸発・消滅”によって価格下落は深刻です。肉用牛農家の100%、酪農家の96%、花き農家の82%、施設園芸農家の76%が苦境を訴えています(日本農業新聞モニター調査)。
いま必要なのは損失補償と公的買い上げ・備蓄
この危機的な事態の打開に必要なのは、まず農漁民の減収を補てんする損失補償であり、需要を失った農水産物の公的な買い上げと備蓄です。その上で、今後を見据えた経営の回復・発展に対する補助が求められます。
しかし、経産省が計上した「持続化給付金」(上限100万円)と肉牛・子牛に対する給付金を除けば、損失補償は皆無です。「日本政府は、なぜ個人に対する損失補償を毛嫌いし、拒否するのか」――こういう質問を説明会でぶつけましたが、冷たく無視するだけ。公的な買い上げと備蓄も、酒米(1・3万トン)を除けば全く行われていません。
安倍政権がやっているのは、コロナ後をにらんでケチケチした補助金を出すこと一辺倒です。
損失補償と買い上げが進む欧州とアメリカ
一方、ヨーロッパやアメリカでは、損失補償と買い上げ・備蓄がスピード感をもって実行されています。
EUは、農家に対し1200万円を上限に損失補償を行うことを各国に指示し、需要を失った乳製品と食肉の在庫を2〜6カ月分に増やし保管経費を助成して、市場から隔離する指令を出しています。学校給食に供給されなかった野菜・果物・生乳を病院や慈善団体、フードバンクなどに寄付した場合の補償対策もとっています。
アメリカは、販売額が5%以上減った農家に、19年生産量の4分の1を対象に価格下落分を補償。上限は2700万円です。「50%減収」だけを対象に、上限100万円までとする日本とは大違いです。
また、農務省は3200億円の追加予算で、野菜・果物、乳製品、食肉を買い上げてフードバンクなどに供給し、さらに低所得者・休校中の児童への食事支援財源として2・7兆円を追加しています。その合計は約3兆円。これだけで、日本の農林水産関係補正予算(0・6兆円)の5倍にあたります。
日本でもコロナウイルス禍のもとで、1日1食にとどめざるをえない人が増え、子ども食堂やフードバンクに行列ができています。これが「新しい生活様式」なのでしょうか!
ヨーロッパとアメリカでできていることもやらず、「新しい生活様式」という名の「新しい自粛要請」を繰り返すばかりの日本のコロナ対策。「安倍政権のふるまいには辟易(へきえき)するばかり。せめて第一次安倍政権のときのように早く投げ出していただきたい」(朝日「論座」)――いま、国民の声で政治を大きく動かす時です。
(新聞「農民」2020.6.15付)
|