飲食店休業でかつてない深刻な打撃
“市場機能”が失われかねない事態
新型コロナで豊洲市場は今…
東京中央市場労働組合執行委員長 中澤 誠さん
私の職場である豊洲市場(東京都江東区)は、生鮮食料品流通の基盤である中央卸売市場ということで「自粛」の対象にはなりませんでした。したがって形式的には普段通りの営業となっていますが、何しろ飲食店・すし店などが軒並み営業自粛となっており、これまで経験したことのない深刻な状況になっています。
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営業自粛などで深刻な状況の豊洲市場 |
しかも営業をしていることで、逆に東京都の「休業補償」等の対象にすらならないという悲惨な状況です。
豊洲市場水産部の全体の状況を卸業者の取り扱い数量・金額でみると、2月は前年度比ほぼ100%だったのが、4月には数量で約82%、金額で約66%にまで落ち込んでいます。その中でも高級品目の多い活魚類では数量で約39%、金額に至っては約29%にまで落ち込んでいます。
つまり、個人経営・中小零細が多いすし店・割烹(かっぽう)・居酒屋などがコロナ感染症の影響を受けて大きく落ち込み、その一方でスーパーなどが売り上げを何とか維持している様子が数字として現れています。
私たちの職場である水産仲卸は、特に高級料理店などを相手にするいわゆる「上物師」(じょうものし)といわれる事業所が特にひどく、「前年度の10%しか売り上げがない。これではやっていけない」などの声がたくさん上がっています。
さらに、観光客をストップしているために飲食店・物販店も売り上げは軒並み減少です。
国や東京都は早急に実効性のある支援を
当然、雇用にも様々な影響が出ています。私たち東京中央市場労働組合では「労働者供給事業」という仲卸事業所向けに日々雇用する労働者の供給を行っていますが、昨年の実績では1日あたり12人から15人が仕事に出ていました。ところがこの3月以降、1日に2人から3人という日が続いており、私を含む10人以上が仕事がない状態が続いています。
また、正規雇用労働者についても、出勤の制限・賃下げ・解雇などが起きています。
以上のように豊洲市場では自粛要請はされていないにもかかわらず、自粛の影響を直接受ける事態になっています。早急に国や東京都が実効性のある支援をしなければ、都民・国民は、貴重な財産を失うことになりかねません。自粛と同時に、自粛被害にも補償を強く求めます。
(新聞「農民」2020.6.8付)
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