日本のコロナ検査
国際的な立ち遅れは明白
関連/ドイツの家族農業を訪ねるツアーは中止に
第2次補正予算で
検査・医療体制の抜本的強化を
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が5月4日に月末まで延長され、14日には、あいまいな基準のまま39県が解除されました。
ゴールデンウイークならぬ「がまんウイーク」を過ごしてきた国民に対し、宣言の延長や解除を通告するからには、生活と営業・営農に対する補償と、検査と医療に対する支援をしっかりやることが不可欠ですが、安倍首相は「必要があれば思い切った対策をとる」と言うだけで、具体策は何もなし。
日本の検査数は桁違いに少ない
とくに問題なのは、科学的な根拠にもとづく具体的な説明がないこと。月末まで緊急事態が続く8都道府県の住民は、いつまで我慢すればいいのか、暗闇の中です。解除された39県の県民にとっても、感染が再び起きたらどうなるのか不安はつきません。
具体的な説明ができないのは、日本の感染検査数が圧倒的に少ないためです。日本の検査数は人口10万人あたり200件以下で、3000件台のドイツ、1200件の韓国に比べて桁(けた)違いに少なく、2~4月の累計は24万件で、アメリカの1日分(20万件)にすぎません(図1)。
クラスター対策専門家会議の責任者が「現在の検査システムでは、実際の感染者が政府発表の10倍か20倍か30倍かは誰もわからない」と認めざるをえないほど、日本の検査の立ち遅れは明らかです。
なぜ立ち遅れたのか
安倍首相は2月29日に「医師が必要と考える場合は、全ての患者が検査を受けられる十分な能力を確保する」と述べ、4月6日には「PCR検査を1日2万件にする」と大見えを切りましたが、4月に9千件を超えたのは2日だけ。5月は1日5千件台に後退しています。
厚労省・専門家会議は2月24日に「限られたPCR検査の資源を、重症化のおそれがある方の検査のために集中させる……症状がなくても感染している可能性がありますが、心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで下さい」という「見解」を示し、“37・5度以上の発熱が4日間続かないかぎり検査は受けられない”体制をつくりました。
貧弱な検査体制を拡充するのではなく、検査をしぼりこむ――安倍政権のこのやり方が立ち遅れの原因です。政府は「37・5度以上、4日間」を5月8日になって撤廃したものの、第1次補正予算には検査強化予算は計上されていません。
対照的なのがアメリカです。「少し暖かくなれば奇跡的に消え去る」(2月10日の選挙集会)とタカをくくっていたトランプ政権が、大あわてでPCR検査を1日20万件以上に増やし、さらに1兆円強の財政支援を行うとしています(図2)。
検査・医療への支援強化を
検査を大幅に増やし、陽性患者の隔離を徹底するやり方のほうが、国民に我慢を強い、経済と農業を犠牲にする「接触機会削減」一辺倒のやり方よりもはるかに有効です。
九州大学の小田垣孝名誉教授は、新規感染者数が10分の1に減るのにかかる日数は、(1)検査数が現状のままでは接触機会を8割減らしても23日かかる一方、(2)検査数が4倍増なら接触機会をまったく減らさなくても8日、(3)検査が10倍になれば3日で達成するというシミュレーションを公表しました(「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」5月5日)。
同氏は「接触機会を減らす対策はひとえに市民生活と経済を犠牲にする一方、検査と隔離のしくみの構築は政府の責任。その努力をせずに8割削減ばかりを強調するなら、それは国の責任放棄に等しい」と指摘しています。
幸い、PCR検査の自動化技術やPCR検査と併用できる抗原検査キットが開発されるなど、検査を抜本的に強化する条件は整いつつあります。
日本共産党の志位和夫委員長は「検査センターを全国で数百カ所つくるとなれば200億円程度が新たに必要」と提言しています。第2次補正予算で、暮らしと営業、営農を守る手厚い支援策とともに、医療と検査体制の拡充支援策の強化がどうしても必要であり、私たちは実現を強く要求します。
農民連が9月20日から26日に予定していた国連「家族農業の10年」特別企画・ドイツの家族農家を訪ねるツアーを中止することにしました。
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が予断を許さないこと、その影響で参加を予定していたバイエルン州農業博覧会の中止が発表されたことを受けてのものです。
参加を検討していただいていた皆様にはご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いします。来年以降の開催が可能になれば、改めてお知らせします。
(新聞「農民」2020.5.25付)
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