新型コロナで牛肉大暴落
生産者負担金の免除とひきかえに
牛マルキン減額するな
農民連・食健連 農水省に要請
新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機が農業と農家経営にも重大な打撃をもたらしています。
とくに牛肉をめぐっては、TPP(環太平洋連携協定)11や日米貿易協定による輸入増大に加えて、今回の新型コロナによる需要の減少が追い打ちとなり、肉牛農家は2年半をかけて育てても人件費はおろかエサ代も出ない危機的状況に追い込まれています。
こうした価格下落時の下支えとされているのが、肥育牛の販売額が生産費を下回った場合に差額の「9割」が補てんされる「肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)」制度です。事業費財源は国が4分の3、生産者負担金が4分の1となっており、国は補正予算によるコロナ対策メニューの一つとして、この生産者負担金を当面6カ月間、実質的に免除すると発表しました。
ところが、この負担金免除にはカラクリがあり、実は交付額も生産者負担分の4分の1が減額され、本来90%が補てんされるべきところ67・5%しか補てんされなくなります。つまり新たな国費投入はなく、到底「支援」対策とは言えない代物なのです。
農民連と全国食健連は5月13日、農水省に対し、この牛マルキン交付金の減額支給問題をはじめ、肉牛農家への支援強化を中心に、農林漁業者や関連業者への直接支給による対策の実施など8項目を求めて、緊急の要請を行いました。
農民連の笹渡義夫会長は、「価格が大暴落し、9割補てんでも生産経費にも達しない。そこで頼るべきマルキンが67・5%しか支払われないとなったら、生産者の驚きと落胆は計り知れない。これで支援策と言えるのか。負担金は免除とした上で、交付金はせめて9割、このコロナの事態の深刻さを考えれば10割出すよう、強く求めたい」と、要求しました。
要請では、過剰在庫のなかで価格暴落が続く牛肉の輸入量を調整することも求めました。「統計ではアメリカからもオーストラリアからも1年間で見ると輸入量は増えておらず、協定上、制限できない」と述べる農水省に対し、参加者からは「セーフガード(緊急輸入制限)の発動基準には達していなくても、積みあがった国内在庫の9割は輸入牛肉が占めている実態がある。コロナで需要が激減しているなかで、国による牛肉の買い取りなど、過剰在庫対策が必要だ」との声があがりました。
要請には、日本共産党の田村貴昭衆院議員が同席しました。
(新聞「農民」2020.5.25付)
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